資産課税情報資産課税課情報|第2号|令和2年1月14日|国税庁|資産課税課 💛個人の事業用資産についての贈与税・相続税の納税猶予及び免除に関する質疑応答事例について 令和元年度税制改正において創設された個人の事業用資産についての贈与税・相続税の納税猶予に関する質疑応答事例を取りまとめたので、執務の参考として送付する。なお、質疑応答事例は、令和2年1月1日現在の法令に基づくものである。 《制度の概要等》 (問1)個人の事業用資産についての贈与税・相続税の納税猶予及び免除の概要
(答)
(注) 1 措置法第 25 条の2第3項の規定によるもの(正規の簿記の原則によるもの。なお、具体的には問 16 を参照。)に限る。以下同じ。 2 特定事業用資産の概要については、問6を参照。 3 先代事業者と生計を一にする配偶者その他の親族及び措置法令第 40 条の7の8第4項又は第 40 条の7の 10 第5項に定める者(以下「生計一親族等」という。)からの特定事業用資産の贈与又は相続若しくは遺贈については、上記の期間内で、先代事業者からの贈与又は相続若しくは遺贈の日から1年を経過する日までにされたものに限る。 4 「贈与税の納税猶予」の適用に係る贈与者(措置法第 70 条の6の8第1項に規定する贈与者をいう。以下同じ。)が死亡した場合には、贈与税は免除されるとともに、納税猶予の適用を受けている資産は、贈与時の価額により受贈者が相続又は遺贈により取得したものとみなされ相続税が課されるが(措置法 70 の6の9)、一定の要件を満たしたときは、当該受贈者は当該資産について「相続税の納税猶予」の適用を受けることができる。 2 ただし、上記Aにより免除されるまでに、この制度の適用を受ける資産をその事業の用に供さなくなった場合など一定の場合には、納税が猶予されている贈与税・相続税の全部又は一部について納税猶予の期限が確定し、その税額と利子税を納付する必要がある。 3 なお、円滑化法認定を受けるには、平成 31 年4月1日から令和6年3月 31 日までに中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律施行規則(以下「円滑化省令」という。)第 16 条第3号に規定する個人事業承継計画(以下「個人事業承継計画」という。)を都道府県知事に提出し、その確認(円滑化省令 17@三。以下「個人事業承継計画の確認」という。)を受けなければならないこととされている(円滑化省令6O七チ、八ト、九ニ、十ニ、17C)。 (参考1)後継者の要件 後継者(特例事業受贈者又は特例事業相続人等)の要件は、次のとおりである(措置法 70 の6の8A二、70 の6の 10A二、措置法規則 23 の8の8B〜E、23 の8の9B、C、㉙)。 1 贈与の日において 20 歳以上であること(贈与税のみ)(注1)。 2 円滑化法認定を受けていること。 3 贈与の日まで引き続き3年以上にわたり特定事業用資産に係る事業(注2)に従事していたこと(注1)(相続税の場合には、被相続人が 60 歳未満で死亡した場合を除き、相続開始の直前において特定事業用資産に係る事業(注2)に従事していたこと)。 4 贈与(相続開始)の時から贈与税(相続税)の申告期限まで引き続き当該特定事業用資産の全てを有し、かつ、自己の事業の用に供していること。 5 贈与税(相続税)の申告期限において開業の届出書を提出していること及び青色申告の承認を受けていること(相続税の場合は、承認を受ける見込みである場合を含む。)。 6 その事業が、贈与(相続開始)の時において、資産保有型事業、資産運用型事業及び性風俗関連特殊営業に該当しないこと。 7 個人事業承継計画の確認(注3)を受けた者であること。 (注) 1 特定事業用資産の贈与の時前に相続又は遺贈により取得した当該特定事業用資産に係る事業と同一の事業に係る他の資産について「相続税の納税猶予」の適用を受けようとする場合又は受けている場合の「贈与税の納税猶予」の適用については、上記1及び3の要件は不要とされている(措置法規則 23 の8の8B)。 2 特定事業用資産に係る事業と同種又は類似の事業に係る業務(当該特定事業用資産に係る事業に必要な知識及び技能を習得するための高等学校等の教育機関における修学を含む。)が含まれる。 3 「贈与税の納税猶予」の適用に係る贈与者が死亡した場合において、措置法第 70 条の6の9の規定により特例事業受贈者が当該贈与者から相続又は遺贈により取得したものとみなされた特例受贈事業用資産について「相続税の納税猶予」の適用を受ける場合には、円滑化省令第 13 条第6項(同条第8項において準用する場合を含む。)又は第9項(同条第 11 項において準用する場合を含む。)の都道府県知事の確認による(措置法規則 23 の8の9㉙)。 (参考2)贈与者又は被相続人の要件 贈与者又は被相続人の要件は、次の区分に応じそれぞれに定めるとおりである(措置法 70 の6の8@、70 の6の 10@、措置法令 40 の7の8@、40 の7の 10@)。 1 贈与者(被相続人)が事業を行っていた者(先代事業者)である場合 ⑴ 贈与税の場合には、廃業届出書を提出していること又は申告期限までに提出する見込みであること。 ⑵ 贈与の日(相続開始の日)の属する年、その前年及びその前々年の確定申告書を青色申告書により提出していること。 2 1以外の場合 ⑴ 1に定める者の贈与の直前(相続開始の直前)において、その者の生計一親族等であること。 ⑵ 1に定める者の贈与の時(相続開始の時)後に贈与(相続開始)をしていること。 (問2)納税猶予の適用を受けるための手続
(答)
※ 1 贈与又は相続後であっても、「円滑化法認定」の申請時(上記の期間内に限る。)までは提出が可能。 2 「贈与税の納税猶予」の適用を受けていた者に係る贈与者が死亡した場合において「相続税の納税猶予」の適用を受けるときは「円滑化法認定」は不要であるが、都道府県知事による「円滑化法の確認」を受けるための申請を上記の期限までに行う必要がある(円滑化省令 13E、H)。 3 後継者が贈与又は相続前から承継した事業以外の業務を行っている場合には、青色申告をしようとする年分のその年の3月 15 日までに申請を行う必要がある。 4 青色申告の承認を受けていた被相続人の事業を相続により承継した場合は、相続開始を知った日(死亡の日)の時期に応じて、それぞれ次の期間内に申請を行う必要がある。 @ その死亡の日がその年の1月1日から8月 31 日までの場合・・・死亡の日から4月以内 A その死亡の日がその年の9月1日から 10 月 31 日までの場合・・・その年の 12 月 31 日まで B その死亡の日がその年の 11 月1日から 12 月 31 日までの場合・・・その年の翌年の2月 15 日まで なお、上記のほか、贈与者である先代事業者は、「廃業届出書」を、その事業を廃止した日から1月以内に税務署に提出する必要がある。 (解説)
2 「個人事業承継計画」の提出 後継者は、先代事業者の事業を確実に承継するための具体的な計画を記載した「個人事業承継計画」を策定し、認定経営革新等支援機関(税理士、商工会、商工会議所等)の所見を記載の上、平成 31 年4月1日から令和6年3月 31 日までに、先代事業者の主たる事務所が所在する都道府県の知事に提出し、その確認を受けることとされている(円滑化省令 17C)。 なお、贈与又は相続後であっても、円滑化法認定の申請時(上記の期間内に限る。)までは「個人事業承継計画」を提出することが可能である(問3参照)。 3 「円滑化法認定」の申請 後継者は、贈与又は相続後に、都道府県知事の「円滑化法認定」を受ける必要がある(円滑化法12@、円滑化省令6O七〜十)。 この「円滑化法認定」を受けるためには、贈与の場合には、その贈与を受けた年の翌年1月 15日までに、相続の場合には、その相続開始の日の翌日から8月以内に、認定を受ける者の主たる事務所が所在する都道府県の知事に、申請書を提出することとされている(円滑化省令7I〜L)。 なお、「贈与税の納税猶予」の適用を受けていた者に係る贈与者が死亡した場合において「相続税の納税猶予」の適用を受けるときは、「円滑化法認定」は不要であるが、都道府県知事による「円滑化法の確認」を受ける必要があり、上記の期限までに、確認を受ける者の主たる事務所が所在する都道府県の知事に、申請書を提出することとされている(円滑化省令 13E〜J)。 4 「青色申告の承認」の申請 後継者は青色申告の承認を受けていること(相続税の場合は、その承認を受ける見込みであることを含む。)が要件とされているため(措置法 70 の6の8A二ホ、70 の6の 10A二ニ)、その所得税の納税地の所轄税務署長に対し、「所得税の青色申告承認申請書」を提出する必要がある。 なお、この申請書は、事業を開始した日から2月以内に提出する必要があるが(所法 144)、青色申告の承認を受けていた被相続人の事業を相続により承継した場合は、相続開始を知った日(死亡の日)の時期に応じて、それぞれ次の期間内に提出することとされている(所基通 144−1)。 @ その死亡の日がその年の1月1日から8月 31 日までの場合・・・死亡の日から4月以内 A その死亡の日がその年の9月1日から 10 月 31 日までの場合・・・その年の 12 月 31 日まで B その死亡の日がその年の 11 月1日から 12 月 31 日までの場合・・・その年の翌年の2月 15 日まで ただし、後継者が、贈与又は相続前から他の業務を行っている場合には、青色申告をしようとする年分のその年3月 15 日までに申請を行う必要がある(所法 144)。 なお、後継者が当該他の業務について既に青色申告の承認を受けている場合には、新たに申請を行う必要はない。 5 「開業届出書」の提出 後継者は承継した事業について開業届出書を提出していることが要件とされているため(措置法 70 の6の8A二ホ、70 の6の 10A二ニ)、その所得税の納税地の所轄税務署長に対し、承継した事業に係る「開業届出書」を、開業の日から1月以内に提出する必要がある(所法 229)。 6 以上は、後継者が必要となる手続であるが、「贈与税の納税猶予」に係る贈与者のうち先代事業者に該当する者については、その贈与をした事業に係る「廃業届出書」の提出が要件とされており(措置法令 40 の7の8@一イ)、当該届出書については、その事業を廃止した日から1月以内に納税地の所轄税務署長に提出することが必要となる(所法 229)。 |
会社の事業承継税制は納税猶予の対象資産が非上場株式等ですが、個人版事業承継税制の対象資産は事業用の土地や建物等、一定の減価償却資である点が主な相違点です。
北沢淳編「Q&Aで理解する!個人版事業所系税制の仕組みと手続き」税務研究会出版局(2019年、54頁) (問3)相続開始後の個人事業承継計画の提出の可否
(答) ]は、所要の要件を満たすことで、「相続税の納税猶予」の適用を受けることができる。 (解説) 1 「相続税の納税猶予」の適用を受けるためには、その事業を承継しようとする後継者は円滑化法認定を受ける必要があるが(措置法 70 の6の 10A二イ)、円滑化省令では、その円滑化法認定の前提として、個人事業承継計画を都道府県知事に提出し、その確認を受けることが要件とされている(円滑化省令6O七チ、八ト、九ニ、十ニ)。 2 この個人事業承継計画については、円滑化省令において、平成 31 年4月1日から令和6年3月31 日までの間に提出することとされているが(円滑化省令 17C)、相続開始前に提出することまでは、要件とされていない。 3 したがって、個人事業承継計画の提出は相続開始後であっても円滑化法認定の申請時までに行えばよく、当該個人事業承継計画につき都道府県知事の確認を受けるとともに、円滑化法認定を受けた上で相続税の申告書をその提出期限までに提出するなど、所要の要件を満たしたときは、]は甲から取得した特定事業用資産につき「相続税の納税猶予」の適用を受けることができるこ ととなる。 (注) 1 円滑化法認定を受けるためには、相続開始後8月以内に申請を行う必要がある(円滑化省令7J、L)。 2 個人事業承継計画を令和6年3月 31 日までに都道府県知事に提出する必要があることは、相続開始後に提出する場合であっても同様である。 4 なお、財産を取得した後に個人事業承継計画の提出が可能な点は、贈与の場合も同様である。 (問4)納税猶予の適用後に必要となる手続(継続届出書の提出)
(答) 贈与税・相続税の全部について納税の猶予に係る期限が確定するまでの間、3年ごとに、一定の 書類を添付した「継続届出書」を、納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。 (解説) 1 「個人の事業用資産についての贈与税・相続税の納税猶予」の適用を受ける特例事業受贈者等 (特例事業受贈者又は特例事業相続人等をいう。以下同じ。)は、贈与税又は相続税の全部につき 納税の猶予に係る期限が確定する日までの間に特例贈与報告基準日又は特例相続報告基準日(特 定申告期限の翌日から3年を経過するごとの日をいう。以下「特例報告基準日」という。)が存す る場合には、届出期限(当該特例報告基準日の翌日から3月を経過する日をいう。)までに、引き 続いて納税猶予の適用を受けたい旨及び特例(受贈)事業用資産(特例受贈事業用資産又は特例 事業用資産をいう。以下同じ。)に係る事業に関する事項を記載した届出書(以下「継続届出書」 という。)を、納税地の所轄税務署長に提出しなければならないこととされている(措置法 70 の 6の8H、70 の6の 10I、措置法令 40 の7の8㉘、40 の7の 10㉖、措置法規則 23 の8の8P 〜R、23 の8の9N〜P)。 (注) 「特定申告期限」とは、特例事業受贈者等の最初の措置法第 70 条の6の8第1項の規定の適用に係る贈与 の日の属する年分の贈与税の申告書の提出期限又は最初の措置法第 70 条の6の 10 第1項の規定の適用に係 る相続に係る同項に規定する相続税の申告書の提出期限のいずれか早い日をいう(措置法 70 の6の8E、70 の6の 10E)。 2 なお、継続届出書には、次の書類を添付する必要がある(措置法規則 23 の8の8P、23 の8の 9N)。 ⑴ 特例報告基準日における次の特例(受贈)事業用資産の区分に応じそれぞれに定める書類 イ 償却資産 当該資産に係る固定資産税の通知書の写しその他の書類(当該資産の所有者の 住所及び氏名並びに当該資産の所在、種類、数量及び価格が記載されたものに限る。) ロ 自動車、軽自動車、原動機付自転車 自動車検査証の写し、自動車税等課税明細書の写し その他の書類でこれらの資産が特定事業用資産に該当することを明らかにするもの ハ 果樹等 その果樹等が所在する土地が耕作の用に供されていることを証する書類 ⑵ 特例報告基準日の属する年の前年以前3年内の各年における特例(受贈)事業用資産に係る 事業に係る次に掲げる書類(特例事業受贈者等が営む事業が当該特例(受贈)事業用資産に係 る事業のみである場合には、イに掲げる書類を除く。) イ 当該事業に係る貸借対照表及び損益計算書 ロ 当該特例(受贈)事業用資産とその他の資産の内訳を記載した書類で当該特例(受贈)事業 用資産がイの貸借対照表に計上されていることを明らかにするもの(固定資産台帳等) ⑶ その他参考となるべき書類 (注) 会社の設立に伴う現物出資による特例(受贈)事業用資産の全ての移転について措置法第 70 条の6の8第 6項又は第 70 条の6の 10 第6項の承認(現物出資承認)を受けた特例事業受贈者等が継続届出書を提出す る場合の添付書類は、その会社の定款の写し等、「非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予」(措置法 70 の7等)における添付書類に準じた書類とされている(措置法規則 23 の8の8M、23 の8の9K)。 |
《特定事業用資産》 (問6)納税猶予の対象となる特定事業用資産の概要
(答) 1 この制度の対象となる「特定事業用資産」とは、先代事業者(贈与者又は被相続人)の事業の用に供されていた次の資産で、その贈与又は相続開始の日の属する年の前年分の事業所得に係る青色申告書の貸借対照表に計上されていたものをいう( 措置法 70 の6の8A一、70 の6の 10A一)。 @ 宅地等(その面積の合計のうち 400 u以下の部分) A 建物(その床面積の合計のうち 800 u以下の部分) B 次の減価償却資産 ・ 固定資産税の課税対象とされているもの ・ 自動車税・軽自動車税の営業用の標準税率が適用される自動車 ・ その他一定のもの(貨物運送用など一定の自動車、乳牛・果樹等の生物、特許権等の無形固定資産) (注) 1 「宅地等」とは、土地又は土地の上に存する権利をいい、一定の建物又は構築物の敷地の用に供されているもののうち、その贈与又は相続開始の直前に事業の用に供されていたものとして措置法令第 40 条の7の8第6項又は措置法令第 40 条の7の 10 第6項に定めるものに限られる。以下同じ。 2 先代事業者又は生計一親族等から相続又は遺贈により取得した宅地等について措置法第 69 条の4((小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例))の規定(以下「小規模宅地等の特例」という。)の適用を受ける者がある場合には、上記@の面積から一定の面積を控除した面積による(問 30 参照)。 3 「建物」は、その贈与又は相続開始の直前に事業の用に供されていたものとして措置法令第 40 条の7の8第7項又は措置法令第 40 条の7の 10 第8項に定めるものに限られる。以下同。 2 なお、先代事業者の生計一親族等が所有する資産であっても、先代事業者の事業の用に供されていた上記1に掲げる資産で上記1の貸借対照表に計上されていたものについては、特定事業用資産に該当する。 (問7)特定事業用資産の基準となる貸借対照表
(答) いずれも、事業を営んでいた甲の贈与の日の属する年(令和2年)の前年分(令和元年分)の事業所得に係る青色申告書の貸借対照表による。 (問8)特定事業用資産の範囲(その1):自動車
(答) 次の自動車が対象となる(措置法 70 の6の8A一ハ、措置法規則 23 の8の8A二、三)。 @ 自動車税・軽自動車税の営業用の標準税率が適用される自動車 A @以外の自動車で次に掲げるもの イ 自動車登録規則別表第2の自動車の範囲欄の1、2、4及び6に掲げる普通・小型自動車 ロ 道路運送車両法施行規則別表第2の4の自動車の用途による区分欄の1及び3に掲げる軽自動車 B 原動機付自転車、軽自動車(2輪のものに限る。)及び小型特殊自動車(4輪以上のもののうち、乗用のもの及び営業用の標準税率が適用される貨物用のものを除く。) C 固定資産税の課税対象とされる大型特殊自動車 (注) 上記のうちA及びBについては、主として趣味又は娯楽の用に供する目的で保有するものは除かれ、その資産のうちに特定事業用資産に係る事業の用以外の用に供されていた部分があるときは、当該事業の用に供されていた部分に限られる。 (問9)特定事業用資産の範囲(その2):無形固定資産・生物
(答) 特定事業用資産に該当する減価償却資産である無形固定資産及び生物とは、所得税法施行令第6条第8号に掲げる無形固定資産及び同条第9号に掲げる生物をいい、具体的には、次の表のとおりである(措置法規則 23 の8の8A一、所令6八、九)。
(問 10)宅地等に係る限度面積(その1):複数の受贈者が同一の贈与者から贈与を受けた場合
(答) 適用対象となる面積は、a宅地及びb宅地の合計で 400 uまでとなる。 なお、納税猶予の適用を受ける宅地等の面積の内訳については、X及びYの合意に基づく選択による。 (問 11)宅地等に係る限度面積(その2):一の受贈者が複数の贈与者から贈与を受けた場合
(答) a宅地は 500 uのうち 400 uまで、 b宅地は 200 uの全てについて、「贈与税の納税猶予」の適用 を受けることができる。 (問 12)宅地等に係る限度面積(その3):贈与税の納税猶予に係る贈与者が死亡した場合
(答) B宅地のうち 150 uが「相続税の納税猶予」の適用対象となる。 (問 13)宅地等に係る限度面積(その4):限度面積要件を満たさない場合
(答) 子X及び子Yが「贈与税の納税猶予」の適用を受けることができないのは、a宅地及びb宅地の みであり、他の事業用資産については「贈与税の納税猶予」の適用を受けることができる。 《個人の事業用資産についての贈与税の納税猶予及び免除関係》 (問 14)贈与者の要件(その1):事業者とその生計一親族等からの贈与
(答) 次のとおり。 ・ 事例@の場合には、甲及び乙ともに「贈与税の納税猶予」に係る贈与者に該当する。 ・ 事例Aの場合には、甲のみ「贈与税の納税猶予」に係る贈与者に該当する。 (問 15)贈与者の要件(その2):生計を一にする親族がそれぞれ事業を行っている場合
(答) 事例@及びAのいずれの場合も、甲及び乙は「贈与税の納税猶予」に係る贈与者に該当する。 ※納税猶予の適用を受けるには、それぞれの贈与を平成31年1月1日から令和10年12 月31日までの間に行う必要がある。 (問 16)贈与者の要件(その3):青色申告
(答) 甲は「贈与税の納税猶予」に係る贈与者に該当しない。 特定事業用資産に係る事業を行っている者については、その事業について、贈与の日の属する年、その前年及び前々年の所得税の確定申告書を、青色申告書により提出していることが、贈与 税の納税猶予に係る贈与者の要件の一つとして設けられている(措置法70の6の8@、措置法令 40の7の8@一ロ)。 |
(問 17)贈与者の要件(その4):「既に贈与をしているもの」の意義@
(答) 事例B以外は、甲は「既に贈与をしているもの」に該当する。 1 措置法第 70 条の6の8第1項は、贈与者について、「既にこの項の規定の適用に係る贈与をし ているものを除く」と規定している。 したがって、贈与者はその事業に係る特定事業用資産の全てを一括して贈与する必要があるの であって、贈与者が複数の事業を営んでいる場合にも、その複数の事業に係る特定事業用資産の 全てを一括して贈与する必要がある。 2 ただし、特例事業受贈者が2人以上ある場合において、同一年中に、これらの特例事業受贈者 に特定事業用資産の贈与を行うものは「既に贈与をしているもの」に含まれないこととされてい る(措置通 70 の6の8−1(注)1)。 3 問の事例を見ると、 事例@は、同一年中の贈与であるが、受贈者が同一であるため、 事例Aは、異なる年中の贈与であるため、 事例Cは、異なる者への贈与であるが、同一年中の贈与でないため、 それぞれの事例の甲は、「既に贈与をしているもの」に該当することとなる((参考)事例1・2)。 4 他方、事例Bの甲は、同一年中に異なる者に贈与をしていることから、「既に贈与をしているも の」には該当しないこととなる((参考)事例3)。 5 なお、「既に贈与をしているもの」に該当するかどうかの判定は贈与者ごとに行うことから、ある贈与者が特定事業用資産の贈与をした場合に、その贈与者に係る受贈者が他の者から既に特定 事業用資産の贈与を受けていたときであっても、当該他の者は、当該贈与者が「既に贈与をしているもの」に該当するかどうかの判定には関係しないこととなる((参考)事例4・5)。 (問 18)贈与者の要件(その5):「既に贈与をしているもの」の意義A
(答) b土地の贈与(第二贈与)が、第一贈与と同一年中に行われ、かつ、その受贈者が異なる者である 場合を除き、甲は「既に贈与をしている者」に該当する。 (問 19)「贈与税の納税猶予」の適用を受けるための期間
(答) 事例@の場合は令和2年6月1日までに、事例Aの場合は令和 10 年 12 月 31 日までに、それぞれ 贈与を行う必要がある。 措置法第 70 条の6の8第1項は、「贈与税の納税猶予」の対象となる贈与について、「平成 31 年 1月1日から令和 10 年 12 月 31 日までの間の贈与で、最初のこの項の規定の適用に係る贈与及び 当該贈与の日その他政令で定める日から1年を経過する日までの贈与に限る」と規定していることから、「平成 31 年1月1日から令和 10 年 12 月 31 日までの間」という期間は「最初のこの項の規定の適用に係る贈与」と「当該贈与の日その他政令で定める日から1年を経過する日までの贈与」の両方に係ることとなり、当該期間内に行われるこれらの贈与が、「贈与税の納税猶予」の対象となることとなる(措置通 70 の6の8―3)。 (注) 「政令で定める日」とは、最初の措置法第 70 条の6の 10 第1項の規定の適用に係る相続の開始の日をいう (措置法令 40 の7の8A)。 (問 20)贈与税の納税猶予税額の計算(その1):暦年課税による場合
(答) 猶予税額は 1,035.5 万円、申告期限までに納付すべき税額は 244.5 万円となる。 (解説) 1 「贈与税の納税猶予」の適用に係る贈与により取得した特例受贈事業用資産が暦年課税の適用に係るものである場合には、その年中にその者が贈与により取得した全ての財産に係る贈与税額のうち、措置法第 70 条の6の8第2項第3号イの規定に基づき当該特例受贈事業用資産の価額をその年分の贈与税の課税価格とみなして計算した金額が納税猶予分の贈与税額となり、その納税が猶予されることとなる。 (注)上記により計算した納税猶予分の贈与税額が0となる場合には、「贈与税の納税猶予」の適用はない。 2 したがって、問の事例では、次のとおりとなる。 ⑴ その年中に取得した全ての財産に係る贈与税の額 現金 事業用資産 基礎控除額 {(500 万円+3,000 万円)− 110 万円 }× 50% − 415 万円 = 1,280 万円 ⑵ 事業用資産に係る納税猶予分の贈与税額 事業用資産 基礎控除額 (3,000 万円 − 110 万円 )× 45% − 265 万円 = 1,035.5 万円 ⑶ 申告期限までに納付すべき税額 ⑴ − ⑵ = 244.5 万円 (問 21)贈与税の納税猶予税額の計算(その2):相続時精算課税による場合
(答) 猶予税額は 400 万円、申告期限までに納付すべき税額は 100 万円となる。 (解説) 1 「贈与税の納税猶予」の適用に係る贈与により取得した特例受贈事業用資産が相続時精算課税の適用を受けるものである場合には、その年中に相続税法第 21 条の9第5項に規定する特定贈与者から贈与により取得した全ての財産に係る贈与税額のうち、措置法第 70 条の6の8第2項第3 号ロの規定に基づき当該特例受贈事業用資産の価額をその年分の贈与税の課税価格とみなして計算した金額が納税猶予分の贈与税額となり、その納税が猶予されることとなる。 (注) 上記により計算した納税猶予分の贈与税額が0となる場合には、「贈与税の納税猶予」の適用はない。 2 したがって、問の事例では、次のとおりとなる。 ⑴ 甲(特定贈与者)から取得した全ての財産に係る贈与税の額 事業用資産 現金 特別控除額 {3,000 万円+500 万円−(2,500 万円−1,500 万円)}×20% = 500 万円 ⑵ 事業用資産に係る納税猶予分の贈与税額 事業用資産 特別控除額 {3,000 万円−(2,500 万円−1,500 万円)}× 20% = 400 万円 ⑶ 申告期限までに納付すべき税額 ⑴ − ⑵ = 100 万円 (問 22)贈与税の納税猶予税額の計算(その3):複数の贈与者から暦年課税による贈与を受けた場合
(答) 甲及び乙それぞれから「贈与税の納税猶予」の適用に係る贈与により取得した事業用資産の価額 の合計額を、その年分の贈与税の課税価格とみなして納税猶予分の贈与税額を計算し、その金額を 贈与者(甲及び乙)の異なるものごとの事業用資産の価額によりあん分することで、それぞれごと の納税猶予分の贈与税額(猶予税額)が計算される。 なお、問の事例の場合には、猶予税額は、1,530 万円(うち、甲から受けた贈与に係るもの 1,147.5 万円、乙から受けた贈与に係るもの 382.5 万円)、申告期限までに納付すべき税額は 250 万円となる。 (解説) 1 特例受贈事業用資産に係る贈与者が2以上ある場合の納税猶予分の贈与税額の計算については、 措置法令第40条の7の8第11項及び第12項に規定が設けられている。 具体的には、その贈与が暦年課税によるものである場合には、特例事業受贈者がその年中に贈与により取得した全ての特例受贈事業用資産の価額の合計額を、当該特例事業受贈者に係るその 年分の贈与税の課税価格とみなし(措置法令40の7の8J一)、措置法第70条の6の8第2項第3 号イの規定に基づき贈与税額の計算を行う(100円未満の端数処理は行わない)。 そして、これにより計算された金額を、贈与者の異なるものごとの特例受贈事業用資産の価額によりあん分したものが、その異なるものごとの納税猶予分の贈与税額(100円未満の端数切捨て) となり(措置法令40の7の8K)、これらの納税猶予分の贈与税額の合計額が、当該特例事業受贈者に係る納税猶予分の贈与税額となる。 2 したがって、問の事例では、次のとおりとなる。 ⑴ その年中に取得した全ての財産に係る贈与税の額 事業用資産(甲) 現金(甲) 事業用資産(乙) 基礎控除額 {(3,000 万円 + 500 万円 + 1,000 万円 )− 110 万円 }×50%−415 万円=1,780 万円 ⑵ 事業用資産に係る納税猶予分の贈与税額 @ 事業用資産のみ取得したものとして計算した贈与税の額 事業用資産(甲) 事業用資産(乙) 基礎控除額 {( 3,000 万円 + 1,000 万円 )− 110 万円 }× 50% − 415 万円 = 1,530 万円 A @のうち、甲からの贈与に係るもの 事業用資産(甲) 事業用資産(甲) 事業用資産(乙) @ × 3,000 万円 / ( 3,000 万円 + 1,000 万円 )= 1,147.5 万円 B @のうち、乙からの贈与に係るもの 事業用資産(乙) 事業用資産(甲) 事業用資産(乙) @ × 1,000 万円 / ( 3,000 万円 + 1,000 万円 )= 382.5 万円 C 納税猶予分の贈与税額 A + B = 1,530 万円 ⑶ 申告期限までに納付すべき税額 ⑴ − ⑵ = 250 万円 3 なお、複数の贈与者から贈与を受けた場合において、その贈与者が死亡したときにおける免除される猶予税額の計算については、問 57 を参照。 (問 23)贈与税の納税猶予税額の計算(その4):複数の贈与者から相続時精算課税による贈与を受けた場合
(答) 「贈与税の納税猶予」の適用に係る贈与により取得した事業用資産の価額を特定贈与者(甲及び 乙)ごとに合計した額のそれぞれの額を、その年分の贈与税の課税価格とみなして納税猶予分の贈与税額(猶予税額)を計算する。 なお、問の事例の場合には、猶予税額は 700 万円(うち、甲から受けた贈与に係るもの 600 万円、 乙から受けた贈与に係るもの 100 万円)、申告期限までに納付すべき税額は 100 万円となる。 (解説) 1 特例受贈事業用資産に係る贈与者が2以上ある場合の納税猶予分の贈与税額の計算については、 措置法令第40条の7の8第11項及び第12項に規定が設けられている。 具体的には、その贈与が相続時精算課税によるものである場合には、特例事業受贈者がその年 中に特例措置の適用に係る贈与により取得した全ての特例受贈事業用資産の価額を特定贈与者ごとに合計した額のそれぞれの額を当該特例事業受贈者に係るその年分の贈与税の課税価格とみなし(措置法令40の7の8J二)、措置法第70条の6の8第2項第3号ロの規定に基づき特定贈与者の異なるものごとの納税猶予分の贈与税額の計算を行うこととなる(100円未満の端数切捨て)。 そして、これらの納税猶予分の贈与税額の合計額が、当該特例事業受贈者に係る納税猶予分の贈与税額となる。 2 したがって、問の事例では、次のとおりとなる。 ⑴ その年中に取得した全ての財産に係る贈与税の額 @ 甲から取得した全ての財産に係る贈与税の額 事業用資産 現金 特別控除額 {( 4,000 万円 + 500 万円 )− ( 2,500 万円 − 1,500 万円 ) }× 20% = 700 万円 A 乙から取得した全ての財産に係る贈与税の額 事業用資産 特別控除額 ( 3,000 万円 − 2,500 万円 )× 20% = 100 万円 B @ + A = 800 万円 ⑵ 事業用資産に係る納税猶予分の贈与税額 @ 甲からの贈与に係るもの 事業用資産 特別控除額 { 4,000 万円 − ( 2,500 万円 − 1,500 万円 ) }× 20% = 600 万円 A 乙からの贈与に係るもの 事業用資産 特別控除額 ( 3,000 万円 − 2,500 万円 )× 20% = 100 万円 B @ + A = 700 万円 ⑶ 申告期限までに納付すべき税額 ⑴ − ⑵ = 100 万円 3 なお、複数の贈与者から贈与を受けた場合において、その贈与者が死亡したときにおける免除される猶予税額の計算については、問 57 を参照。 |
(問 25)贈与税の納税猶予税額の計算(その6):事業に係る債務の引受けがある場合
(答) 「贈与税の納税猶予」の適用に係る贈与により取得した事業用資産の価額から債務の金額(契約書等により事業に関するものと認められる債務以外の債務であることが明らかにされている債務の金額を除く。)を控除した価額を、その年分の贈与税の課税価格とみなして納税猶予分の贈与税額を計算する。 また、この場合における「事業用資産の価額」は、債務の引受けがないものとした場合における価額(相続税評価額)による。 なお、問の事例の場合には、猶予税額は 1,035.5 万円、納付税額は 494.5 万円となる。 (解説) 1 特例受贈事業用資産の贈与とともに引き受けた債務がある場合の納税猶予分の贈与税額の計算については、特例受贈事業用資産の価額から、その引き受けた債務の価額(契約書等により特例 受贈事業用資産に係る事業に関するものと認められる債務以外の債務であることが明らかにされている債務の金額を除く。)を控除した価額を、その年分の贈与税の課税価格とみなして計算する こととされている(措置法70の6の8A三イ、措置法令40の7の8G)。 2 ところで、資産の贈与とともに債務を引き受けた場合において、当該資産が土地及び土地の上 に存する権利並びに家屋及びその附属設備又は構築物であるときは、これらの資産の価額は財産評価基本通達の定めによって算定した価額によらず、「通常の取引価額」に相当する金額によって 評価することとされている(平成元年3月29日付直評5、直資2―204「負担付贈与又は対価を伴 う取引により取得した土地等及び家屋等に係る評価並びに相続税法第7条及び第9条の規定の適 用について」(以下「負担付贈与通達」という。)1)。 ただし、納税猶予分の贈与税額の計算に当たっては、これらの資産である特例受贈事業用資産の価額は債務の引受けがないものとした場合における価額とする旨規定されているため(措置法 令40の7の8H)、これらの資産の価額については負担付贈与通達の適用はなく、財産評価基本通達の定めによって算定した価額によることとなる。 (注) 特例受贈事業用資産の価額が債務の引受けがないものとされるのは納税猶予分の贈与税額の計算をする場合に限られるのであって、納付すべき贈与税の額の計算については「通常の取引価額」に相当する金額による こととなる。 3 したがって、問の事例では、次のとおりとなる。 ⑴ その年中に取得した全ての財産に係る贈与税の額 土地・建物 (通常の取引価額) 機械装置 債務 基礎控除額 {(5,000 万円 + 1,000 万円 − 2,000 万円)− 110 万円 }×50%−415 万円=1,530 万円 ⑵ 特定事業用資産に係る納税猶予分の贈与税額 土地・建物 (評基通による価額) 機械装置 債務 基礎控除額 {(4,000 万円 + 1,000 万円 − 2,000 万円)− 110 万円 }×45%−265 万円=1,035.5 万円 ⑶ 申告期限までに納付すべき税額 ⑴ − ⑵ = 494.5 万円 4 なお、贈与者が死亡した場合には、猶予税額は免除されるとともに(措置法 70 の6の8M二)、 その猶予税額に対応する特例受贈事業用資産については、特例事業受贈者が、その贈与者から相 続又は遺贈により取得したものとみなされ、その特例受贈事業用資産の贈与時の価額により相続 税の計算を行うこととされているが(措置法 70 の6の9)、納税猶予分の贈与税額の計算に当た り控除された債務がある場合には、相続又は遺贈により取得したものとみなされる特例受贈事業用資産の価額は、次の算式により計算した金額となる(措置法令 40 の7の 10㉟六)。 (算式) 特例受贈事業用資産の価額×(A−B)/A (注) 1 「特例受贈事業用資産の価額」は、債務の引受けがないものとした場合の価額による。 2 上記算式中の符号は次のとおり A=納税猶予分の贈与税額の計算に係る特例受贈事業用資産の価額の合計額 B=納税猶予分の贈与税額の計算において控除された債務の金額 3 問の事例の場合に、甲の死亡の時において相続又は遺贈により取得したものとみなされる特例受贈事業用資産の価額は次のとおり(甲の死亡の時までに納税猶予の期限の確定がなかった場合)。 (4,000 万円+1,000 万円) ×{ (4,000 万円+1,000 万円)- 2,000 万円}/( 4,000 万円+1,000 万円) = 3,000 万円 《個人の事業用資産についての相続税の納税猶予及び免除関係》 (問 26)相続税の納税猶予税額の計算方法(その1):通常の場合
(答) 次のとおり。
(解説) 1 「相続税の納税猶予」では、特例事業相続人等が取得した財産は特例事業用資産のみであるとして、その価額を当該特例事業相続人等に係る相続税の課税価格とみなして(他の相続人等については、その者が取得した全ての財産の価額による。)計算した当該特例事業相続人等に係る相続税額が、納税猶予分の相続税額となり(措置法 70 の6の 10A三)、これと、通常の計算方法(相続人等が取得した全ての財産の価額による。)による当該特例事業相続人等に係る相続税の額との差額が、当該特例事業相続人等が申告期限までに納付すべき税額となる。 また、特例事業相続人等以外の者については、相続人等が取得した全ての財産に基づき計算した金額が、その者の相続税額となる。 2 したがって、問の事例では、次のとおりとなる。 ⑴ X及びYが取得した全ての財産に基づくX及びYの算出税額の計算 @ 課税価格の合計額 (3億円(事業用資産)+2億円(その他))【Xの取得財産】+5億円【Yの取得財産】=10 億円 A 課税遺産総額 @ − 4,200 万円(基礎控除額※)= 9億 5,800 万円 ※「3,000 万円+法定相続人の数×600 万円」による。なお、問の事例では、法定相続人の数はX及びYの 2人であるため、基礎控除額は 4,200 万円となる(以下、問 27 までにおいて同じ。)。 B Aの金額に基づく相続税の総額 3億 9,500 万円 C 各人の算出税額 X: B × 5億円/10 億円 = 1億 9,750 万円 Y: B × 5億円/10 億円 = 1億 9,750 万円 ⑵ Xに係る納税猶予分の相続税額(Xが取得した財産は事業用資産のみとして計算) @ 課税価格の合計額 3億円【Xの取得財産:事業用資産】 + 5億円【Yの取得財産】= 8億円 A 課税遺産総額 @ − 4,200 万円(基礎控除額)= 7億 5,800 万円 B Aの金額に基づく相続税の総額 2億 9,500 万円 C Xに係る納税猶予分の相続税額 B × 3億円/8億円 = 1億 1,062.5 万円 ⑶ 申告期限までに納付すべき税額 X:1億 9,750 万円 − 1億 1,062.5 万円 =8,687.5 万円 Y:1億 9,750 万円 3 なお、上記の計算は、一の特例事業相続人等が取得した特例事業用資産に係る事業が複数ある場合も同様である。 (問 27)相続税の納税猶予税額の計算方法(その2):特例事業相続人等が複数ある場合
(答) Xに係る納税猶予分の相続税額は、XについてはA事業用資産の価額をその相続税の課税価格とみなして(Yについては、取得した全ての財産の価額による。)計算した相続税額による。 また、Yに係る納税猶予分の相続税額は、YについてはB事業用資産の価額をその相続税の課税 価格とみなして(Xについては、取得した全ての財産の価額による。)計算した相続税額による。 なお、問の事例の猶予税額等は、次のとおりとなる。
|
(解説) 1 特例事業相続人等に係る納税猶予分の相続税額の計算は問 26 のとおりであるところ、被相続人 に係る特例事業相続人等が2以上ある場合におけるその計算は、それぞれの特例事業相続人等ご とに行うこととなる。 2 つまり、ある特例事業相続人等に係る納税猶予分の相続税額の計算を行う場合には、その者に ついては特例事業用資産の価額が相続税の課税価格とみなされるが、他の特例事業相続人等に係 る課税価格は、その者が取得した全ての財産に基づくものとなる。 3 したがって、問の事例では、次のとおりとなる。 ⑴ X及びYが取得した全ての財産に基づくX及びYの算出税額の計算 @ 課税価格の合計額 (3億円(A事業用資産)+2億円(その他))【Xの取得財産】 +(2億円(B事業用資産)+3億円(その他))【Yの取得財産】= 10 億円 A 課税遺産総額 @ − 4,200 万円(基礎控除額)= 9億 5,800 万円 B Aの金額に基づく相続税の総額 3億 9,500 万円 C 各人の算出税額 X: B × 5億円/10 億円 = 1億 9,750 万円 Y: B × 5億円/10 億円 = 1億 9,750 万円 ⑵ 各人の納税猶予分の相続税額 @ Xに係る納税猶予分の相続税額(Xが取得した財産はA事業用資産のみとして計算) イ 課税価格の合計額 3億円【Xの取得財産:A事業用資産】 + 5億円【Yの取得財産】= 8億円 ロ 課税遺産総額 イ − 4,200 万円(基礎控除額)= 7億 5,800 万円 ハ ロの金額に基づく相続税の総額 2億 9,500 万円 ニ Xに係る納税猶予分の相続税額 ハ × 3億円/8億円 = 1億 1,062.5 万円 A Yに係る納税猶予分の相続税額(Yが取得した財産はB事業用資産のみとして計算) イ 課税価格の合計額 5億円【Xの取得財産】 + 2億円【Yの取得財産:B事業用資産】= 7億円 ロ 課税遺産総額 イ − 4,200 万円(基礎控除額)= 6億 5,800 万円 ハ ロの金額に基づく相続税の総額 2億 4,500 万円 ニ Yに係る納税猶予分の相続税額 ハ × 2億円/7億円 = 7,000 万円 ⑶ 申告期限までに納付すべき税額 X:1億 9,750 万円 − 1億 1,062.5 万円 = 8,687.5 万円 Y:1億 9,750 万円 − 7,000 万円 = 1億 2,750 万円 (問 28)相続税の納税猶予税額の計算方法(その3):控除すべき債務がある場合
(答) 猶予税額を計算する場合の特例事業用資産の価額は 7,000 万円となる。 (解説) 1 「相続税の納税猶予」の適用を受ける場合の猶予税額の計算は問 26 のとおりであるが、その適 用を受ける特例事業相続人等について相続税法第 13 条の規定により控除すべき債務がある場合には、猶予税額の計算の基礎となる特例事業用資産の価額は、その価額から特定債務額を控除した残額(以下「特定価額」という。)によることとされている(措置法令 40 の7の 10H)。 2 そして、この「特定債務額」とは、次の算式により計算した金額をいうこととされている(措置 法令 40 の7の 10I)。 (Ⓐ ー Ⓑ + Ⓒ) Ⓐ = 債務 ー 事業関連等債務 Ⓑ = 特例事業相続人等が取得したその他の財産の価額 © = 事業関連等債務 (注) 1 「事業関連等債務」とは、相続税法第 13 条の規定により控除すべき特例事業相続人等の負担に属する 債務のうち、特例事業用資産に係る事業に関する債務以外の債務であることが金銭の貸付に係る契約書等 の書面により明らかにされているもの以外の債務をいう。 2 Ⓐ−Ⓑ<0の場合には0。 3 問の事例では、事業関連等債務は 3,000 万円(=4,000 万円−1,000 万円)であるところ、上記 2の算式により計算した特定債務額は 3,000 万円となるため、相続税の猶予税額を計算する場合の特例事業用資産の価額(特定価額)は 7,000 万円(=1億円−3,000 万円)となる。 (参考)控除すべき債務がある場合の特定価額の計算イメージ(略) (問 29)相続税の納税猶予税額の計算方法(その4):代償分割があった場合
(答) 代償財産の価額を代償財産の交付をした者が相続又は遺贈により取得したそれぞれの相続財産の価額の割合によりあん分し、それぞれの相続財産の価額から当該あん分後の代償財産の価額を控除する方法によることが合理的な計算方法と考えられるが、法令上特段の控除方法は定められていな いので、代償財産の価額を相続税の納税猶予の特例の適用を受けない財産の価額から優先的に控除し計算して差し支えない。 (解説) 1 「代償分割」とは、共同相続人又は包括受遺者のうち1人又は数人が相続又は包括遺贈により取得した財産の現物を取得し、その現物を取得した者が他の共同相続人又は包括受遺者に対して 債務を負担する分割の方法をいうのであるが、代償分割の方法により遺産分割が行われ、代償財産の交付をしている場合の当該代償財産の交付をした者に係る相続税の課税価格の計算について は、相続税法基本通達 11 の2−9((代償分割が行われた場合の課税価格の計算))により、「相続又は遺贈により取得した現物の財産の価額から交付をした代償財産の価額を控除した金額」としている。 2 これは、相続財産を現物で取得した者については、民法第 909 条の規定によりその取得した相続財産の現物が直接被相続人から承継取得したものとされ、まさにその取得した相続財産そのものが相続又は遺贈により取得した財産となるとしても、その財産のうちには、代償財産の交付を受ける者のその代償財産の価額が混入しているものと言わざるを得ないことから、同通達においては、代償財産を交付した者については、相続税の課税価格の計算上の技術的措置として、取得した相続財産の現物の価額からその代償財産の価額を控除しているところである。 3 そして、このことは「相続税の納税猶予」の適用を受ける者が代償財産の交付をした者である 場合も同様であることから、その者に係る相続税額及び納税猶予税額の計算に当たっても、同通達によることとなる。 4 しかしながら、「相続税の納税猶予」の適用を受ける者が代償財産の交付をした者である場合で、相続又は遺贈により取得をした財産の中に納税猶予の適用を受ける特定事業用資産とそれ以外の財産とがある場合において、納税猶予の適用を受ける者に係る相続税の課税価格の計算方法については、法令上特段の定めはない。 5 この計算方法については、 @ 代償財産として交付をした財産の価額を納税猶予の適用を受ける特定事業用資産の価額から優先的に控除する方法 A 代償財産として交付をした財産の価額を納税猶予の適用を受ける特定事業用資産以外の財産の価額から優先的に控除する方法 B 交付をした代償財産の価額を代償財産の交付をした者が相続又は遺贈により取得をしたそれぞれの財産の価額によりあん分し、それぞれの財産の価額から当該あん分後の代償財産の価額 を控除する方法 のいずれかが考えられるが、特定の現物財産と代償財産とがひも付きになっておらず、相続財産全体に対して代償分割が行われた場合には、それぞれの相続財産に対し代償財産の価額が均等に混入しているとするのが最も合理的な考え方であると考えられる。 6 ただし、上記4のとおり、納税猶予の適用を受ける特定事業用資産とそれ以外の財産とがある場合の代償財産の価額の控除方法について法令において定められていない以上、Bの方法でなければならないとする明確な根拠はなく、また、納税猶予税額の計算上、納税猶予の適用を受ける特定事業用資産の価額が大きい方が猶予税額も大きくなることからすれば、納税猶予の適用を受ける特定事業用資産以外の財産の価額から優先的に代償財産の価額を控除して申告がなされてき たとしても、これを認めて差し支えないものと考える。 7 問の事例では、子Xは、相続により特定事業用資産(1億円)のほか、その他の財産(2,000 万 円)を取得したが、代償財産(6,000 万円)を交付している。 したがって、代償財産の価額 6,000 万円のうち、2,000 万円を納税猶予の適用を受けないその他の財産の価額から控除し、その残額 4,000 万円を特定事業用資産の価額(1億円)から控除し、この控除した後の価額(6,000 万円)に基づき、通常の相続税額及び納税猶予税額の計算を行って差し支えないこととなる。 (参考) 交付をした代償財産の価額を相続により取得したそれぞれの財産の価額に応じてあん分 する方法(上記5Bの方法)によった場合の各財産の価額 次のとおり、通常の相続税の計算における子Xの課税価格は 6,000 万円となり、上記7と同様であるが、猶予税額を計算する場合の子Xの課税価格は 5,000 万円となり、上記7に比 べ減少するため、猶予税額も減少することとなる。 ・ 特定事業用資産:1億円 − 6,000 万円 × 1億円 /(1億円+2,000 万円) = 5,000 万円 ・ その他の財産:2,000 万円 − 6,000 万円 × 2,000 万円/ (1億円+2,000 万円) = 1,000 万円 (問 30)小規模宅地等の特例の適用を受ける者がある場合(その1):限度面積等
(答) 次のとおり。 @ 事例@の場合・・・子XはA事業に係る事業用資産の全てについて「相続税の納税猶予」の適用を受けることができない。 A 事例Aの場合・・・300 u B 事例Bの場合・・・260 u C 事例Cの場合・・・400 u (解説) 1 「相続税の納税猶予」の適用対象となる宅地等には 400 uの限度面積が設けられているが、その相続に係る被相続人から相続又は遺贈により取得をした宅地等について「小規模宅地等の特例」の適用を受ける者がある場合には、その適用を受ける措置法第 69 条の4第1項に規定する小規模宅地等(以下「小規模宅地等」という。)の区分に応じ、「相続税の納税猶予」の適用対象となる宅地等の面積等は、次のとおりとなる(措置法 70 の6の 10A一イ、二ヘ、措置法令 40 の7の 10F)。
※ 1 他に貸付事業用宅地等について小規模宅地等の特例の適用を受ける場合には、ハによる。 2 αは特定居住用宅地等の面積、βは特定同族会社事業用宅地等の面積、γは貸付事業用宅地等の面積。 2 したがって、問の事例については、次のとおりとなる。 ⑴ 事例@ 子Yが小規模宅地等の特例の適用を受けるb宅地は「特定事業用宅地等」であるため、子Xはa宅地だけでなく、A事業に係る事業用資産の全てについて「相続税の納税猶予」の適用を 受けることができないこととなる。 ⑵ 事例A 子Yが小規模宅地等の特例の適用を受けるc宅地(100 u)は「特定同族会社事業用宅地等」であるため、「相続税の納税猶予」の適用対象となる宅地等の限度面積は、300 u(=400 u−100 u)となる。 ⑶ 事例B 子Yが小規模宅地等の特例の適用を受けるd宅地(70 u)は「貸付事業用宅地等」であるため、「相続税の納税猶予」の適用対象となる宅地等の限度面積は、260 u(=400 u−2×70 u)となる。 ⑷ 事例C 子Yが小規模宅地等の特例の適用を受けるe宅地(99 u)は「特定居住用宅地等」であるため、「相続税の納税猶予」の適用対象となる宅地等の限度面積は、400 uとなる。 3 なお、被相続人から「相続税の納税猶予」の対象となる宅地等又は「小規模宅地等の特例」の対象となる宅地等を相続又は遺贈により取得した者が一人でない場合には、これらの宅地等を取得した全ての者の、これらの制度の適用を受けるものの選択についての同意を証する書類を、相続税の申告書に添付することとされている(措置法令 40 の2D三、措置法規則 23 の8の9M八)。 |
(参考)複数の宅地等について小規模宅地等の特例の適用を受けた場合の限度面積の計算例 問の事例において、子Yが複数の宅地等について小規模宅地等の特例の適用を受けた場合の限度面積は次のとおりとなる。
c宅地(特定同族会社事業用宅地等):100 u d宅地(貸付事業用宅地等) : 70 u e宅地(特定居住用宅地等) : 99 u ※2 b宅地(特定事業用宅地等)について小規模宅地等の特例の適用を受ける場合、他に小規模宅地等の特例の適用を受ける宅地の区分にかかわらず、子Xは事業用資産の全てについて「相続税の納税猶予」の適用を受けることができない。 《個人の事業用資産の贈与者が死亡した場合の相続税の課税の特例関係》 (問 33)概要
(答) 甲の死亡により、「贈与税の納税猶予」の適用を受ける特例受贈事業用資産については、Xが甲から相続により取得したものとみなされ、贈与時の価額により相続税の課税対象となるが、所要の要件を満たすことにより、当該特例受贈事業用資産について「相続税の納税猶予」の適用を受けることができる。 なお、甲の死亡により、納税猶予されていた贈与税は免除される。 (解説) 1 「贈与税の納税猶予」の適用を受ける特例事業受贈者に係る贈与者(前の贈与者を含む。)が死亡した場合には、その適用を受ける特例受贈事業用資産(措置法第70条の6の8第5項第3号又は第6項の規定により特例受贈事業用資産とみなされたものを含み、猶予中贈与税額に対応する部分に限る。)は、その者の死亡による相続税については、当該特例事業受贈者が当該贈与者から相続(当該特例事業受贈者が当該贈与者の相続人以外の者である場合には、遺贈)により取得したものとみなされ、贈与(前の贈与者の死亡の場合は前の贈与)の時(措置法第70条の6の8第18項の規定による免除を受けた場合には、同項に規定する認可決定日)の価額により相続税の課税対象となる(措置法70の6の9)。 (注) 1 「前の贈与者」とは、次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれに定める者に特定事業用資産の贈与をした者をいう(措置法70の6の8@、措置法令40の7の8B)。 イ 贈与者に対する措置法第70条の6の8第1項の規定の適用に係る贈与が、同条第14項第3号の贈与(免除対象贈与)である場合 免除対象贈与をした者のうち最初に措置法第70条の6の8第1項の規定の適用を受けた者 ロ イに掲げる場合以外の場合 贈与者 2 「前の贈与」とは、(注)1のイ又はロに掲げる場合の区分に応じ、それぞれに定める者に対する当該特例受贈事業用資産の贈与をいう。 2 この際、都道府県知事の「円滑化法の確認」(円滑化省令13E〜J)を受けるなど所要の要件を満たしたときは、当該特例事業受贈者は当該特例受贈事業用資産について「相続税の納税猶予」の適用を受けることができる。 3 なお、贈与者の死亡により、納税猶予されていた贈与税は免除されることとなる(措置法70の6の8M二)。 (問 34)適用期限の有無
(答) 「贈与税の納税猶予」の適用に係る贈与者が死亡した場合における「相続税の納税猶予」の適用については、適用期限は設けられていない。 (解説) 1 「相続税の納税猶予」では、措置法第70条の6の10第1項において、その対象となる相続又は遺贈について、原則として、平成31年1月1日から令和10年12月31日までの間のものに限る旨規定している。 2 ただし、「贈与税の納税猶予」の適用に係る贈与者が死亡した場合には、措置法第70条の6の10第30項において同条第1項の読替規定が設けられており、この「平成31年1月1日から令和10年12月31日までの間」の取得という要件は不要とされていることから、当該期間後に贈与者が死亡した場合においても当該贈与者に係る特例事業受贈者は措置法第70条の6の9の規定により当該贈与者から相続又は遺贈により取得したものとみなされた特例受贈事業用資産について「相続税の納税猶予」の適用を受けることができることとなる。 3 なお、「贈与税の納税猶予」の適用を受けていた特例事業受贈者が「相続税の納税猶予」の適用を受ける場合には、円滑化省令第13条第6項(同条第8項において準用する場合を含む。)又は第9項(同条第11項において準用する場合を含む。)の規定による都道府県知事の確認を受ける必要があるが(措置法70の6の10A二ト、措置法規則23の8の9C、㉙)、この場合の相続に係る「個人事業承継計画」の都道府県知事への提出等は不要である。 (問 35)小規模宅地等の特例との適用関係
(答) @について: 子Yは、B宅地について特定事業用宅地等に係る「小規模宅地等の特例」の適用を受けることはできない。 Aについて: A宅地 250 uのうち 100 uまでが「相続税の納税猶予」の適用対象となる。 (解説) 1 @について ⑴ 措置法第69条の4第6項は、「贈与税の納税猶予」の適用を受けた特例事業受贈者に係る贈与者から相続又は遺贈により取得した特定事業用宅地等及び「相続税の納税猶予」の適用を受ける特例事業相続人等に係る被相続人から相続又は遺贈により取得した特定事業用宅地等については、「小規模宅地等の特例」の適用がない旨規定している。 ⑵ したがって、問の事例の子Yは、B宅地について「小規模宅地等の特例」の適用を受けることはできないこととなる。 2 Aについて ⑴ 特例事業受贈者が、措置法第70条の6の9の規定により「贈与税の納税猶予」の適用に係る贈与者から相続又は遺贈により取得したものとみなされた特例受贈事業用資産について「相続税の納税猶予」の適用を受ける場合において、当該贈与者から相続又は遺贈により取得した財産について「小規模宅地等の特例」の適用を受ける者がいるときは、当該特例受贈事業用資産のうち宅地等に該当するものについては、贈与税の申告書に記載された当該宅地等の面積のうち400uから措置法令第40条の7の10第7項に定める面積を控除した面積に達するまでの部分に限り、「相続税の納税猶予」の適用を受けることができることとされている(措置法令40の7の10㉟三)。 (注)「措置法令第40条の7の10第7項に定める面積」については、問30を参照。 ⑵ 問の事例では、子Zが貸付事業用宅地等に該当するC宅地(150u)について「小規模宅地等の特例」の適用を受けるため、「措置法令第40条の7の10第7項に定める面積」は300u(=2×150u)となり、「相続税の納税猶予」の適用対象となる宅地等は、贈与税の申告書に記載したA宅地の面積250uのうち、100u(=400u−300u)までの部分となる。 (問 36)特例受贈事業用資産に係る贈与が相続時精算課税の適用に係る贈与である場合において贈与者が死亡した場合の取扱い(その1):確定税額がある場合
(答) ⑴ 現に納税猶予の適用を受けている事業用資産 当該事業用資産については、措置法第 70 条の6の9第 1 項の規定により、子Xが甲から相続により取得したものとみなされ、贈与時の価額(8,000 万円)により相続税の課税対象となる。 なお、当該事業用資産は、所要の要件を満たした場合には、「相続税の納税猶予」の適用対象となる。 ⑵ 譲渡した事業用資産 当該事業用資産については、相続税法第 21 条の 15 の規定により、子Xが甲から相続により取得したものとみなされ、贈与時の価額(2,000 万円)により相続税の課税対象となる。 また、納税猶予の期限が到来した贈与税額(300 万円)は、相続税額から控除され、控除しきれなかった金額は還付されることとなる。 (解説) 1 「贈与税の納税猶予」の適用に係る贈与者が死亡した場合(措置法第 70 条の6の9第2項の規定の適用がある場合を除く。)には、それまで納税の猶予を受けていた贈与税は免除され(措置法70 の6の8M二)、その免除を受けた納税猶予税額に係る特例受贈事業用資産は、同条第1項の規定により特例事業受贈者が当該贈与者から相続(当該特例事業受贈者が当該贈与者の相続人以外の者である場合には、遺贈)により取得したものとみなされ、相続税が課税されることとなる(措置法 70 の6の9@)。 2 ただし、この規定の適用がある特例受贈事業用資産は当該贈与者の死亡の時において措置法第70 条の6の8第1項の規定の適用を受けているものに限られるのであって、当該贈与者の死亡の日前にその全部又は一部について納税猶予に係る期限が確定した贈与税に対応する特例受贈事業用資産については、措置法第 70 条の6の9第1項の規定は適用されない。 3 もっとも、相続時精算課税適用者に係る贈与者(特定贈与者)が死亡した場合において、特定贈与者から相続又は遺贈により財産を取得したときは、相続税法第 21 条の 15 の規定により、当該特定贈与者からの贈与により取得した財産で相続時精算課税の適用を受けるものの価額を相続税の課税価格に加算し、特定贈与者から相続又は遺贈により財産を取得しなかった場合には、同法第 21 条の 16 の規定により、当該特定贈与者からの贈与により取得した財産で相続時精算課税の適用を受けるものを当該特定贈与者から相続(当該相続時精算課税適用者が当該特定贈与者の相続人以外の者である場合には、遺贈)により取得したものとみなして、それぞれ相続税の計算をすることとされている。 (注) 特定贈与者からの贈与により取得した財産であっても、当該特定贈与者の死亡により措置法第 70 条の6の8第 14 項第2号の規定により免除された猶予中贈与税額に対応する特例受贈事業用資産については、相続税法第 21 条の 14 から第 21 条の 16 までの規定は適用しないこととされており(措置法 70 の6の8L六)、上記1の措置法第 70 条の6の9の規定のみが適用されることになる。 4 したがって、納税猶予の適用に係る贈与者が死亡した場合において、当該贈与者の死亡の日前に、当該納税猶予に係る贈与税の全部又は一部についての納税猶予の期限が確定しているときにおける当該期限の確定に係る特例受贈事業用資産は、相続税法第 21 条の 15 又は第 21 条の 16 の規定により、贈与の時における価額で相続税が課税されることになる。 この場合、当該納税猶予の期限の確定した贈与税については、相続税から控除され(相法 21 の16B、21 の 16C)、控除しきれなかった金額については還付されることとなる(相法 33 の2)。 |
(問 37)特例受贈事業用資産に係る贈与が相続時精算課税の適用に係る贈与である場合において贈与者が死亡した場合の取扱い(その2):免除税額がある場合
(答) 当該事業用資産については、措置法第 70 条の6の8第 17 項の規定による免除を受けた猶予税額に対応する部分(1,500 万円※)を除き、相続税法第 21 条の 15 の規定に基づき、贈与時の価額(1億円−1,500 万円=8,500 万円)により、相続税の課税対象となる。 また、納税猶予の期限が到来した贈与税額(1,200 万円)は、相続税額から控除され、控除しきれなかった金額は還付されることとなる。 ※ (1億円−8,000 万円)× 300 万円/(300 万円+100 万円) =1,500 万円 (解説) 1 問 36 のとおり、「贈与税の納税猶予」の適用に係る特例受贈事業用資産の贈与が相続時精算課税の適用に係る贈与である場合において、当該贈与に係る贈与者(特定贈与者)が死亡したときは、現に納税猶予の適用を受けていない特例受贈事業用資産については、相続税法第 21 条の 15又は第 21 条の 16 の規定により、贈与時の価額により相続税の課税対象となる。 2 ただし、措置法第 70 条の6の8第 13 項第6号は、特例事業受贈者が同条第 14 項、第 16 項から第 18 項までの規定により猶予税額の免除を受けている場合には、特例受贈事業用資産のうちその免除を受けた猶予税額に対応する部分については相続税法第 21 条の 14 から第 21 条の 16 までの規定は適用しない旨規定してしており、当該部分については相続税の課税対象とならないこと となる。 3 そして、措置法第 70 条の6の8第 17 項の規定による免除(差額免除)の適用を受けた場合の「特例受贈事業用資産のうち免除を受けた猶予税額に対応する部分」とは次の算式により計算した金額に相当する部分が該当することとなる(措置通 70 の6の8−57⑹)。 (算式) (A−B)× C/(C+D) (注)1 上記算式中の符号は次のとおり。 A=当該特例受贈事業用資産の贈与時の価額 B=当該特例受贈事業用資産の措置法第70条の6の8第17項第1号イの譲渡等の対価の額又は同項第2号イの廃止の直前における当該特例受贈事業用資産の時価に相当する金額(当該譲渡等の対価の額が、同項第1号イに規定する当該特例受贈事業用資産の時価に相当する金額の2分の1以下である場合には、当該2分の1に相当する金額) C=措置法第70条の6の8第17項の規定により免除された贈与税の額 D=譲渡等又は廃止の日以前5年以内における必要経費不算入対価等の合計額 2 「差額免除」については問61を、「必要経費不算入対価等」については問42を参照。 4 したがって、問の事例における事業用資産については、措置法第 70 条の6の8第 17 項の規定による免除を受けた猶予税額に対応する部分(1,500 万円)を除き、相続税法第 21 条の 15 の規定に基づき、贈与時の価額(1億円−1,500 万円=8,500 万円)により、相続税の課税対象となる。 また、納税猶予の期限が到来した贈与税額(1,200 万円)は、相続税額から控除され、控除しきれなかった金額は還付されることとなる。 (参考)相続税の課税対象とされない部分のイメージ(問の事例の場合) (略) (問 38)確定事由の概要
(答) 1 全部確定する場合 ⑴ この制度の適用を受ける特例事業受贈者等、特例(受贈)事業用資産又は当該特例(受贈)事業用資産に係る事業について、次の表に掲げる場合のいずれかに該当することとなった場合には、それぞれに定める日から2月を経過する日をもって、猶予税額の全てについて納税猶予の期限が到来することとされている(措置法 70 の6の8B、70 の6の 10B)。
(注) 上記のそれぞれに定める日からその2月を経過する日までの間に当該特例事業受贈者等が死亡した場合における納税の猶予に係る期限は、当該特例事業受贈者等の相続人(包括受遺者を含む。)が当該特例事業受贈者等の死亡による相続の開始があったことを知った日の翌日から6月を経過する日とされている(措置法 70 の6の8㉖、70 の6の 10㉗。2において同じ。)。 ⑵ また、⑴のほか、継続届出書を届出期限までに提出しなかった場合(届出期限までに提出されなかったことにつきやむを得ない事情があると認められる場合に継続届出書が提出されたときを除く。)や増担保命令に応じない場合にも、猶予税額の全てについて納税猶予の期限が到来することとなる(措置法 70 の6の8J、K、70 の6の 10K、L)。 2 一部確定する場合 特例(受贈)事業用資産の全部又は一部が特例事業受贈者等の事業の用に供されなくなった場合には、猶予税額のうち当該事業の用に供されなくなった部分に対応する税額については、当該事業の用に供されなくなった日から2月を経過する日をもって納税の猶予に係る期限とされる(措置法 70 の6の8C、70 の6の 10C)。 ただし、上記に該当する場合でも、次に掲げる場合に該当するときは、納税猶予は継続されることとされている。 ⑴ 特例(受贈)事業用資産を陳腐化等の事由により廃棄をした場合において、その廃棄をした日から2月以内に税務署長にその旨の届出をしたとき(措置法 70 の6の8C、70 の6の 10C。詳細については問 45 参照。) ⑵ 特例(受贈)事業用資産を譲渡した場合において、その譲渡があった日から1年以内にその対価により新たな事業用資産を取得する見込みであることにつきその譲渡があった日から1月以内に税務署長に申請をし、その承認を受けたとき(取得に充てられた対価に相当する部分に限る。)(措置法 70 の6の8D、70 の6の 10D。詳細については問 48 参照。) ⑶ 会社の設立に伴う現物出資により全ての特例(受贈)事業用資産を移転した場合において、その移転につきその移転があった日から1月以内に税務署長に申請をし、その承認を受けたとき(措置法 70 の6の8E、70 の6の 10E。詳細については問 53 参照。) 3 なお、特例事業受贈者等が措置法第 70 条の6の8第6項又は第 70 条の6の 10 第6項の承認(現物出資承認)を受けた場合の納税猶予の期限の確定については、「非上場株式等に係る納税猶予」(措置法 70 の7、70 の7の2、70 の7の5、70 の7の6)における(特例)経営(贈与)承継期間経過後の確定事由に準じた取扱いとなる(措置法令 40 の7の8㉗、40 の7の 10㉕。詳細については問 53 参照。)。 |
(問 39)利子税の計算
(答) 利子税については、納税猶予の期限が到来する税額に、申告書の提出期限の翌日から納税猶予の期限までの期間に応じ、年 3.6%の割合を乗じて計算する。 なお、各年の特例基準割合が年 7.3%の割合に満たない場合には、その年中における利子税の割合については、一定の割合に軽減され、例えば、令和元年(平成 31 年)及び令和2年については、年0.7%に軽減されている。 (解説) 1 納税猶予の期限が到来した税額を納付する場合、併せて利子税を納付しなければならないが、この利子税については、納税猶予の期限が到来する税額に、申告書の提出期限の翌日から納税猶予の期限までの期間に応じ、年 3.6%の割合を乗じて計算することとされている(措置法 70 の6の8㉕、70 の6の 10㉖)。 2 なお、各年の特例基準割合が年 7.3%の割合に満たない場合には、その年中における利子税の割合については、次の算式により計算した割合(0.1%未満の端数切捨て)とされており(措置法93D)、例えば、令和元年(平成 31 年)及び令和2年については、特例基準割合がいずれも 1.6%であるため、利子税の割合は年 0.7%に軽減されることとなる。 (算式) 利子税の割合 = 3.6% × (特例基準割合/7.3%) (注) 「特例基準割合」とは、各年の前々年の 10 月から前年の9月までの各月における銀行の新規の短期貸出約定平均金利の合計を 12 で除して得た割合として、各年の前年の 12 月 15 日までに財務大臣が告示する割合に年1%の割合を加算した割合をいう(措置法 93A)。 (参考)令和2年度税制改正(案) 令和2年度税制改正(案)では、令和3年1月1日以後の期間に対応する利子税については、上記算式の「特例基準割合」を、各年の前々年の9月から前年の8月までの各月における銀行の新規の短期貸出約定平均金利の合計を 12 で除して得た割合として、各年の前年の 11 月 30 日までに財務大臣が告示する割合に年 0.5%の割合を加算した割合(利子税特例基準割合)に見直しすることとされている。 これにより、例えば、利子税特例基準割合が 1.1%である場合には、利子税の割合は年 0.5%に軽減されることとなる。 (問 41)複数の事業を営む場合の資産保有型事業等の判定
(答) A事業及びB事業については、これらの事業に係る総資産の帳簿価額等の合計額に基づき判定を行い、C事業については、当該事業に係る総資産の帳簿価額等に基づき判定を行う。 (問 42)必要経費不算入対価等の意義
(答) @以外は全て、必要経費不算入対価等に該当する。 (解説) 1 措置法第70条の6の8第2項第4号ハに規定する必要経費不算入対価等は、資産保有型事業の判定(措置法70の6の8A四)の際に用いられるほか、同条第16項から第18項までの規定による猶予税額の免除の適用を受ける場合には、一定の必要経費不算入対価等に相当する贈与税については免除されず納付を要することとされている。 2 この必要経費不算入対価等については、措置法令第40条の7の8第16項において、特例事業受贈者の特別関係者が特定事業用資産に係る事業に従事したことその他の事由により当該特例事業受贈者から支払を受けた対価又は給与の金額であって、所得税法第56条((事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例))又は第57条((事業に従事する親族がある場合の必要経費の特例等))の規定により当該事業に係る事業所得の金額の計算上、必要経費に算入されるもの以外のもの、と規定されている。 つまり、特例事業受贈者の特別関係者が当該特例事業受贈者から支払を受けた対価又は給与の金額は、同法第56条又は第57条の規定により必要経費に算入されるものを除き、全て必要経費不算入対価等に該当することとなる。 (注) 特定事業用資産に係る事業に従事する当該特例事業受贈者の使用人(措置法令第40条の7の8第15項第1号又は第2号に掲げる者を除く。)が当該事業に従事したことにより支払を受けた対価又は給与は、必要経費不算入対価等に該当しないものとして差し支えないこととされている(措置通70の6の8−23)。 3 そして、この「所得税法第56条又は第57条の規定により必要経費に算入されるもの」とは、事業を営む居住者と生計を一にする配偶者その他の親族がその事業から支払を受ける対価に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入されるもの(所法56)や、当該生計を一にする配偶者その他の親族が同法第57条第1項に規定する青色事業専従者に該当する場合に当該事業から支払を受ける一定の給与(所法57@)が該当する。 4 したがって、特例事業受贈者と生計を一にする親族に該当しない特別関係者が当該事業から支 払を受けた対価又は給与の金額は、当該事業に係る事業所得の金額の計算上、必要経費に算入されるものであっても、必要経費不算入対価等に該当することとなる。 5 問の事例においては、@の給与は「所得税法第56条又は第57条の規定により必要経費に算入されるもの」に該当するが、AからDはこれに該当しないため、必要経費不算入対価等に該当することとなる。 (参考)必要経費不算入対価等の範囲(イメージ) (略) (問43)一部確定事由に該当した場合における確定税額
(答) @の時点: 47,995,000 円×1,000 万円/1億円 =4,799,500 円 Aの時点: (47,995,000 円−4,799,500 円)× 600 万円/(1億円-1,000 万円) =2,879,700 円 (解説) 1 個人の事業用資産に係る納税猶予では、その適用を受ける特例(受贈)事業用資産をその事業の用に供さなくなった場合には、猶予税額のうち、その事業の用に供されなくなった特例(受贈)事業用資産に対応する部分については、納税猶予に係る期限が到来することとされている(措置法70の6の8C、70の6の10C)。 2 そして、この納税猶予に係る期限が到来する税額は、次の算式により計算することとされている(措置法令40の7の8S、40の7の10P)。 (算式) 納税猶予に係る期限が到来する税額(100円未満切捨て)= A × (C/B) ※1 上記算式の符号は次のとおり。 A=事業の用に供されなくなった直前の猶予税額 B=事業の用に供されなくなった時の直前において当該事業の用に供されていた全ての特例(受贈)事業用 資産の贈与・相続開始の時における価額 C=事業の用に供されなくなった特例(受贈)事業用資産の贈与・相続開始の時における価額 2 Bの特例(受贈)事業用資産には、措置法令第40条の7の8第18項又は第40条の7の10第15項の廃棄の届出に係る特例(受贈)事業用資産が含まれる。 3 措置法第70条の6の8第18項又は第70条の6の10第19項の規定による免除を受けた場合における上記算式中の「贈与・相続開始の時における価額」は、認可決定日における価額となる。 3 問の事例について上記算式に当てはめて計算すると、@の時点での確定税額は4,799,500円、Aの時点での確定税額は2,879,700円となる。 (問 44)限度面積を超える宅地等の一部を譲渡した場合
(答) 問の事例の譲渡は、確定事由に該当しない。 (解説) 1 「相続税の納税猶予」では、宅地等については限度面積要件が設けられており、納税猶予の対象となる特定事業用資産に該当する宅地等は、その面積の合計のうち400u(「小規模宅地等の特例」の適用を受ける者がある場合には、小規模宅地等に相当する面積として措置法令第40条の7の10第7項の規定により計算した面積を400uから控除した面積)以下の部分に限られている(措置法70の6の10A一イ)。 2 ところで、問の事例のように、特例事業相続人等の事業の用に供されている宅地等の面積が限度面積を超えている場合において、その宅地等の一部を譲渡したときに、その譲渡した部分の面積がその超える部分の面積に限られる場合であっても、当該事業の用に供されなくなったものとして措置法第70条の6の10第4項の規定による納税猶予の期限の確定事由に該当するのか、という疑問が生じる。 3 この点、措置法令第40条の7の10第37項では、特例事業相続人等が対象事業用資産(特例事業用資産及び特例受贈事業用資産をいう。以下同じ。)以外の当該特例事業相続人等の事業の用に供されている資産の譲渡又は贈与をしたとき(措置法第70条の6の10第15項第2号の規定の適用に係る贈与をしたときを除く。)は、当該対象事業用資産以外の資産から先に譲渡又は贈与したものとみなす旨規定している。 4 問の事例のA宅地は限度面積を超えていることから、その宅地のうちには「対象事業用資産」に該当する部分(400u)と「対象事業用資産以外の事業の用に供されている資産」に該当する部分(100u)が混在しているところ、その一部を譲渡した場合には、措置法令第40条の7の10第37項の規定により、「対象事業用資産以外の事業の用に供されている資産」に該当する部分(100u)から先に譲渡したものとみなされることとなる。 そして、その譲渡した宅地の面積が100uである問の事例においては、「対象事業用資産以外の事業の用に供されている資産」のみ譲渡したこととなることから、当該譲渡は、措置法第70条の6の10第4項の確定事由に該当しないこととなる。 《確定事由に係る特例》 (問 45)事業用資産の廃棄をした場合の納税猶予の継続特例(その1):概要
(答) その廃棄をした日から2月以内に一定の届出書を納税地の所轄税務署長に提出した場合には、納税猶予の期限は到来せず、納税猶予が継続される。 |
(問 44)限度面積を超える宅地等の一部を譲渡した場合
(答) 問の事例の譲渡は、確定事由に該当しない。 (解説) 1 「相続税の納税猶予」では、宅地等については限度面積要件が設けられており、納税猶予の対象となる特定事業用資産に該当する宅地等は、その面積の合計のうち400u(「小規模宅地等の特例」の適用を受ける者がある場合には、小規模宅地等に相当する面積として措置法令第40条の7の10第7項の規定により計算した面積を400uから控除した面積)以下の部分に限られている(措置法70の6の10A一イ)。 2 ところで、問の事例のように、特例事業相続人等の事業の用に供されている宅地等の面積が限度面積を超えている場合において、その宅地等の一部を譲渡したときに、その譲渡した部分の面積がその超える部分の面積に限られる場合であっても、当該事業の用に供されなくなったものとして措置法第70条の6の10第4項の規定による納税猶予の期限の確定事由に該当するのか、という疑問が生じる。 3 この点、措置法令第40条の7の10第37項では、特例事業相続人等が対象事業用資産(特例事業用資産及び特例受贈事業用資産をいう。以下同じ。)以外の当該特例事業相続人等の事業の用に供されている資産の譲渡又は贈与をしたとき(措置法第70条の6の10第15項第2号の規定の適用に係る贈与をしたときを除く。)は、当該対象事業用資産以外の資産から先に譲渡又は贈与したものとみなす旨規定している。 4 問の事例のA宅地は限度面積を超えていることから、その宅地のうちには「対象事業用資産」に該当する部分(400u)と「対象事業用資産以外の事業の用に供されている資産」に該当する部分(100u)が混在しているところ、その一部を譲渡した場合には、措置法令第40条の7の10第37項の規定により、「対象事業用資産以外の事業の用に供されている資産」に該当する部分(100u)から先に譲渡したものとみなされることとなる。 そして、その譲渡した宅地の面積が100uである問の事例においては、「対象事業用資産以外の事業の用に供されている資産」のみ譲渡したこととなることから、当該譲渡は、措置法第70条の6の10第4項の確定事由に該当しないこととなる。 《確定事由に係る特例》 (問 45)事業用資産の廃棄をした場合の納税猶予の継続特例(その1):概要
(答) その廃棄をした日から2月以内に一定の届出書を納税地の所轄税務署長に提出した場合には、納税猶予の期限は到来せず、納税猶予が継続される。 (解説) 1 個人の事業用資産に係る納税猶予では、その適用を受ける特例(受贈)事業用資産をその事業の用に供さなくなった場合には、当該特例(受贈)事業用資産に対応する猶予税額については、納税猶予に係る期限が到来することとされている(措置法70の6の8C、70の6の10C)。 2 ただし、それが特例(受贈)事業用資産の陳腐化、腐食、損耗その他これらに準ずる事由による当該特例(受贈)事業用資産の「廃棄」である場合には、一定の事項を記載した届出書に廃棄をしたことが確認できる書類を添付して、これをその廃棄をした日から2月以内に納税地の所轄税務署長に提出したときは、納税猶予は継続されることとされている(措置法70の6の8C、70の6の10C、措置法令40の7の8Q、40の7の10N)。 (注) 措置法第40条の7の8第18項又は第40条の7の10第15項にはゆうじょ規定が設けられていないため、上記2の届出をその廃棄をした日から2月以内に行わない場合には、その廃棄をした日から2月を経過する日において、納税猶予に係る期限が到来することとなる。 3 なお、上記2の届出をした特例(受贈)事業用資産に係る猶予税額については、全部確定事由が生じた場合に他の特例(受贈)事業用資産に係る猶予税額とともに納税猶予に係る期限が到来し、また、免除事由が生じた場合に他の特例(受贈)事業用資産に係る猶予税額とともに免除されることとなる。 (問 46)事業用資産の廃棄をした場合の納税猶予の継続特例(その2):事業用資産の処分によって得た対価がある場合
(答) @の場合は「廃棄」に該当しないが、Aの場合は「廃棄」に該当する。 (解説) 1 特例(受贈)事業用資産が事業の用に供されなくなった場合において、それが当該特例(受贈)事業用資産の陳腐化、腐食、損耗その他これらに準ずる事由による当該特例(受贈)事業用資産の「廃棄」であるときは、その廃棄をした日から2月以内に納税地の所轄税務署長にその旨の届出をした場合には、納税猶予に係る期限は到来しないこととされている(措置法70の6の8C、70の6の10C、措置法令40の7の8Q、40の7の10N)。 2 ところで、この特例は「事業の用に供されなくなった特例受贈事業用資産は・・・確定した税額を納付することが原則ですが、建物や減価償却資産の場合、経年劣化や陳腐化に伴いやむを得ず廃棄する場合も想定され、そのような場合にまで一律に猶予税額の納付を求めることは酷と思われるため」(財務省HP「令和元年度税制改正の解説」521頁)に設けられたものであり、したがって、陳腐化等の理由により特例(受贈)事業用資産を処分した場合であっても、その処分によって得た対価があるときは、その処分は措置法第40条の7の8第18項等の「廃棄」には、該当しないこととなる(措置通70の6の8−37、70の6の10−32)。 3 もっとも、特例(受贈)事業用資産の処分に伴い生じた廃材等の買取りが行われた場合であっても、その対価の額が当該処分に当たり要した費用の額以下であるときは、実質的には、当該処分によって得た対価はないものと考えられることから、このような場合については、上記2の「処分によって得た対価がある場合」に該当せず、「廃棄」に該当することとなる。 4 問の事例@の場合には、廃材相当額として10万円を取得していることから、A機械装置の処分は「廃棄」に該当しないが、事例Aの場合には、廃材相当額(10万円)が処分に要した費用(20万円)以下であることから、A機械装置の処分は「廃棄」に該当することとなる。 (注) 事例@の場合には、その処分の日から1月以内に措置法第70条の6の8第5項の買換承認の申請を行い、同項の規定による税務署長の承認を受け、その処分の日から1年以内にその処分によって得た対価をもって事業の用に供する資産を取得した場合には、その取得に充てた対価に相当する部分は納税猶予の期限は確定しないこととなる(問48参照)。 以下の項目は、諸般の事情により工事中 参考 https://www.nta.go.jp/publication/pamph/jigyo-shokei/pdf/0019012-113.pdf
|