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T 争点 平成25年2月28日、東京高等裁判所判決(以下「前件判決」という。)があったこと受けて、国税庁は評価通達189(2)における、大会社の株式保有割合による株式保有特定会社の判定基準を「25%以上」から「50%以上」に改正し、平成25年5月27日以後に相続等により取得した財産を評価する場合に適用することとされた。 平成25年5月27日以後に相続税等の申告をする者が、同日前に相続等により取得した財産を評価する場合にも適用することができ、一定の要件に該当すれば遡って更正の請求ができるとした。しかし法定申告期限等が5年(贈与税の場合は6年)を経過している相続税等については、法令上、本改正に係る改正後の評価通達を適用できないとした。 「前件判決」の原告を含む本件相続人らは更正処分の法定の制限期間を経過していたことから、評価通達改正に伴う更正の請求をすることができなかった。その後、原告を含む相続人らの未分割であった相続財産等について、平成26年1月16日東京家庭裁判所において調停により遺産分割調停(以下「本件調停」という。)が成立し、原告は本件各株式の7分の6を取得した。これに伴う更正の請求において、「前件判決」で認定された評価額に基づく更正の請求等ができるか否かが争われた。1 (注)1 「JUSTAX第303号(平成30年10月10月号)」東京税理会データ通信協同組合・広報部(2018年)、筆者一部改。 (尚、最高裁まで争われ、「前件判決で勝訴」したにもかかわらず、納税者の税額が減少しなかった悲惨な事例である。) U 前提事実の概略(地裁・高裁・最高裁)
(主要な前提事実) @ 原告は、平成25年3月15日「前件判決」の確定後、平成26年1月16日「本件調停」が成立した。 A 原告は、平成26年5月16日、江東東税務署長に対し、「本件調停」の成立を理由に、相続税法32条1号に基づく「更正の請求」(本件更正請求)をした。 原告は本件各株式の価額が「前件判決で認定された額と同額」であることを前提に更正の請求をした。 B 江東東税務署長は、平成26年11月12日、原告に対し本件各株式の価額は「相続税申告における額と同額」とすべきであるとし、 「更正をすべき理由がない旨の通知処分」(本件通知処分)をするとともに、 C 原告に対し、同日、相続税法35条3項に基づく「増額更正処分」(本件更正処分)をした。 D 原告は、「本件通知処分」及び「本件更正処分」における本件各株式の価額を不服として、その一部の取消しを求めた。 ➢論点整理表 |
(注)4 北村導人、岡本高太郎、『遺産分割成立後の相続税に係る更正の請求と取消判決の拘束力の範囲~東京地裁平成30年1月24日判決~』PwC Legal Japan News, June 2019、4頁、筆者一部改。 5 首藤重幸、『相続税法における遺産分割成立後の更正の請求と取消判決の拘束力』(新・判例解説Watch◇租税法No.148)TKCローライブラリー、【文献番号】z18817009-00-131481651、筆者一部改。 6 LEX/DB【文献番号】28111239、【事案の概要】Aの相続人である控訴人及び選定者らが、相続財産でない財産を誤って相続財産として相続税の申告をしたとして、遺産分割協議書成立後に相続税法32条1号に基づく更正の請求をしたのに対して、被控訴人鈴鹿税務署長が同請求を国税通則法23条1項号に基づくものであるとして期間徒過を理由に更正すべき理由がない旨の通知をしたことは違法であるとして、被控訴人鈴鹿税務署長に対して、行政事件訴訟法3条2項に基づき通知処分の取消しと、更正処分の義務付けを求め、被控訴人国に対して、不当利得返還請求権に基づき、過分に支払った相続税相当額の返還等を求めた事案において、原審が控訴人の請求を棄却したため、控訴人が、共同相続人の一人が反対する以上、本件財産を除外した相続税の申告をすることができなかったなどと主張して控訴したところ、共同相続人間で遺産の範囲につき争いがある場合には、各相続人が各人の認識にしたがって個別に申告することが可能であるなどとして、控訴が棄却された事例。 7 LEX/DB【文献番号】28111259、【事案の概要】原告らが、相続財産ではない財産につき誤って相続税申告したとして、遺産分割協議成立後に更正の請求をしたのに対して、被告(鈴鹿税務署長)が、期間徒過を理由に更正すべき理由がない旨の通知をしたことは違法であると主張して、被告に対し、通知処分の取消しと更正処分の義務付けを求め、選択的に、被告(国)に対し不当利得返還請求を求めるなどした事案において、当初の申告に存在するとされる過誤の是正を求めるために相続税法32条に基づく更正の請求をすることは法の予定するところではなく、原告らの更正の請求は、更正の期限を徒過した不適法なものであり、上記通知処分等は適法であるなどとして、請求を棄却した事例。 8 LEX/DB【文献番号】28042338、【事案の概要】被相続人の共同相続人の1人である原告が、当該相続に係る相続税の法定申告期限後に成立した遺産分割調停によって原告が取得した財産に係る課税価格が民法の規定による相続分の割合によって計算されていた課税価格と異なることになったことを理由として、被告(葛飾税務署長)に対して、更正の請求をしたところ、被告が原告の上記更正の理由がない旨の処分をしたため、その取消しを求めた事案において、原告が未分割状態で取得した遺産は、本件調停で分割により所得した財産に係る課税価格の範囲内となり、課税価格及び相続税額のいずれも過大となっていないなどとし、上記更正請求は不適法であり、上記処分は適法であるとして、原告の請求を棄却した事例。 9 前掲注4、筆者一部改。 10 金子宏他編「最新租税基本判例70」208号、298頁、筆者一部改。 11 前掲注4、筆者一部改。 12 前掲注5、筆者一部改。 13 前掲注10、298頁−299頁、筆者一部改。 X 実務の現状 更正請求等の是正方法と期間につき一定の法的制限がおかれることに合理性がある。しかし租税法律主義の観点からは、納税義務者が誤った評価の適用を排除する唯一の是正の機会である更正の請求の排他性の硬直的運用については、これを柔軟的運用に改めるべきである。前件判決は「国税通則法23条2項3号に規定の同法施行令6条1項5号の事由」に該当するが、 相続税に関する各事案は、それぞれが個別的である。期間限定、一定要件による特例、あるいは最近では災害等による諸制度が追加制定されている。法令の原則として基本的制度部分においては詳細な規定を避ける傾向にある。したがって、判例の研究はますます重要なものとなる。法令に規定されていない時価の具体的評価については、行政先例法主義の様相を呈している。本件では独占禁止法の改正に伴う資産構成の評価の変化、あるいはその他の状況変化を起因とする争い、または、法令が想定していない事案における新たな判例等の確定により、法令又は通達改正等もおこなわれる。 財産評価については、財産評価通達に大きく依存することとなる。実務上、短期間に合理的にあらゆる財産を評価するための基準は今のところ財産評価通達のみである。鑑定評価や独自評価という手段もあるが、一定のリスクを伴い、別途費用・時間等を要する。また、特別な事情がある場合を除き、国税当局は独自の鑑定評価については、公平課税を理由に好ましいものとは考えていない 。14 判例においても、評価通達の定める評価方法によっては適正な時価を適切に算定することのできない特別の事情があるとは認められない場合には、鑑定評価額の合理性を否定している事例がある 。15 相続税の基礎控除額が引き下げられ相続税の申告件数が増加し、近年は、相続人等の権利意識も高まり、ネット上で、たやすく相続に関する法律情報を入手することもでき、遺産分割が相続税の法定申告期限までに成立しない事例は増加傾向にある。この場合、遺産分割後に更正の請求・修正申告等が予定されることとなる。 本件判決はそのような事例に実務上の示唆を与えるものとなる。控訴審の行方も注目される 。16 (注)14 LEX/DB【文献番号】66015299、国税不服審判所裁決【裁決要旨】相続税法22条は、相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、特別の定めがあるものを除き、当該財産の取得の時における時価による旨規定しているが、全ての財産の時価(客観的交換価値を示す価額)は必ずしも一義的に確定されるものではないため、課税実務上、財産評価の一般的基準を財産評価基本通達に定め、これに定められた評価方法を画一的に適用して形式的な平等を貫くことにより、かえって実質的な租税負担の平等を著しく害することが明らかであるといった特別の事情がある場合を除き、財産評価基本通達に定めた評価方法によって財産を評価することとしている。 15 LEX/DB【文献番号】25449987、東京地方裁判所判決、など 16 前掲注4、6頁、筆者一部改。 Y 取消判決(前件判決)の拘束力 行政事件は、通常の民事事件とは異なる特殊な取扱を必要とすることが少なくないため、「行政事件訴訟法」が制定されており、行政事件の裁判は、民事訴訟法のほか、「行政事件訴訟法」の定めるところに従って行われることとされている。租税訴訟も、行政事件の一種として、租税法令の中に別段の定めがある場合の他は、当然この法律の適用を受けることになる。17 18 行政事件訴訟法33条1項は「処分又は裁決を取り消す判決は、その事件について、処分又は裁決をした行政庁その他の関係行政庁を拘束する。」と規定している。19 このいわゆる「拘束力」は一方で行政庁に判決の趣旨に従って積極的に行動することを義務づける(積極的義務行為の義務づけ)意味を持つとされる。以上からすると、拘束力が及ぶのは、さしあたり、前訴において審理判断された事由に限られることになる。20 国は、前件判決に拘束されるとしても、それは「相続税法32条1号の事由」に当たらず、「国税通則法23条1号の事由」に該当し得るにすぎないと主張した。これに対して本件判決では「争点となった個々の財産の評価方法ないし価額に係る認定・判断並びにこれらを基礎として算定される課税価格及び相続税額に係る認定・判断に,判決主文が導き出されるのに必要な事実認定及び法律判断として,行政事件訴訟法33条1項所定の拘束力が生じているということができる」と判示した。筆者はこの判示は合理的なものであると考える。 取消判決の拘束力は、「その事件」について及ぶものと規定されている。よって、判決はその拘束力が生じているから「後の相続税法32条1号に基づく更正の請求又は同法35条3項に基づく更正処分に係る事件についても,同一の被相続人から相続により取得した財産に係る相続税の課税価格及び相続税額に関する事件であることに変わりがない以上,行政事件訴訟法33条1項にいうその事件として,上記の拘束力が及ぶものと解するのが相当であって,従前の更正処分について,争点となり,その評価方法ないし価額が判決によって変更されるに至った個々の財産については,課税庁において,同判決における評価方法ないし価額を基礎として課税価格を算定しなければならないものというべきである」と結論づけた。本件は、本件申告から相当期間を経過しているものの、処分・決定、前件判決の確定などは、いずれも「同一の相続財産」に関するものであり「その事件」を個別に分離することには合理性がない。本件判決で裁判所の示した「その事件」に係る判断は合理的であると判断する。21 本件では、前件判決は、株式の評価について一定の評価方法が合理的であると認定し、それに基づき価格を認定したからこそ更正処分を取消したと考えられるため、前件判決の理由中、株式の評価方法として類似業種比準方式を用いるべきとしている点につては、判決主文を導くために必要な事実認定であると考えられ、これは傍論や間接事実ではない。22 取消判決の拘束力が及ぶ範囲は、判決理由中の判断のうち、「この拘束力は、判決主文が導き出されるのに必要な事実認定及び法律判断にわたるものである」。23 (注)17 国税通則法(行政事件訴訟法との関係) 第114条 国税に関する法律に基づく処分に関する訴訟については、この節及び他の国税に関する法律に別段の定めがあるものを除き、行政事件訴訟法(昭和37年法律第139号)その他の一般の行政事件訴訟に関する法律の定めるところによる。 18 金子宏「租税法」(第23版)、1071頁、(2019年)、弘文堂、筆者一部改。 19 前掲注4、4頁、筆者一部改。 (取消判決(前件判決)の拘束力) ・「当該規定は、取消判決の拘束力について規定したものと言われていますが(塩野宏『行政法U』(第5版 補訂版)(有斐閣)186頁)。通説的見解では、この拘束力について、既判力とは異なり取消訴訟における取消判決に与えられた特殊な効力であり、行政庁に判決の趣旨に従って行動をする実体法上の義務を生じさせたものと解されています。(塩野・行政法U 188頁)。この点、取消判決により行政処分が取り消され、当該処分が違法であることが確定しても、それのみでは原告の救済が十分に行われず、行政庁に判決の趣旨に従った行動を義務付けることによってはじめて救済の実効性が保障される場合が少なくないため、拘束力を特別に法定したと説明されています。」(宇賀克也『行政法概説U』(第5版)(有斐閣)(280頁)。 ・前掲注5、3頁、筆者一部改。 (取消判決の拘束力) 「行訴法33条1項は「処分又は裁決を取り消す判決は、その事件について、処分又は裁決をした行政庁その他の関係行政庁を拘束する。」として取消判決の拘束力の定めをおいている。この拘束力が生ずるのは、判決の主文に含まれる判断を導くために不可欠な理由中の判断であり、法的判断のみならず事実認定に及ぶが、判決の結論と直接関係しない傍論や要件事実を認定する過程における間接事実についての認定には拘束力は生じないとされる(宇賀克也『行政法概説U』(有斐閣、2006年)238頁)。 本件判決は、前訴で「争点となった個々の財産の評価方法ないし価格に係る認定・判断並びにこれらを基礎として算定される課税価格及び相続税額に係る認定・判断」に拘束力が生じていると判示している。判決での税額の判定に拘束力が生じるかについては疑問とする議論もあるが、前訴での更正処分の取消を導くために不可欠の理由中の判断となった「個々の財産の評価方法に係る認定・判断」について拘束力が生じることには疑いのないところであろう。この認定が基礎となっていなければ、前訴において、増額更正処分のうち当初申告税額を超える部分をすべて取り消すことは導きえないものであることは明らかである。なお、このような評価方法に係る認定・判断は、定性的なものであって、金額的に可分なものではないから、増額更正処分のうち当初申告税額を超える部分を取消すため必要な範囲でのみ拘束力があるというようなことは考えられない。例えば類似業種比準方式だと1株100円でS1+S2方式だと1株300円というときに、増額更正処分のうち当初申告税額を超える部分を取消すためには1株200円以下であることが示せれば十分だからといって、類似業種比準方式が正しい評価方法であるという判断のうち1株200円以下に相当する部分だけについて拘束力が生ずるということは考えられず、類似業種比準方式が正しい評価方法であるという判断自体に拘束力が生じることになる。 この拘束力により、課税庁は、前訴判決で認定されA社株の相続税評価について類似業種比準方式と異なる方法を基礎とすることはできない。ただし、行訴法33条1項が「その事件」について拘束すると規定することから、前訴判決の拘束力は、未分割遺産の状態での財産評価に限定されるものであり、分割後の更正の請求や更正処分には関係しないとする反論も考えられる。この点については、分割後における段階での課税庁による財産評価については、「同一の被相続人から相続により取得した相続財産に係る相続税の課税価格及び相続税額に関する事件であることに変わりがない」ことから、これに前訴判決の拘束力が及ぶとする本件判決の判断は妥当なものである。同一の被相続人からの相続に係る同一の相続税事案であるにもかかわらず、未分割遺産段階での相続財産の評価方法を示した判決内容だからといって、分割後の段階になれば課税庁は無視してよいということには当然なりえない。」 20 村上裕章「取消訴訟における審理の範囲と判決の拘束力−審判決取消訴訟からの示唆−」知的財産法政策学研究 Vol.10(2006年)、148頁−149頁、筆者一部改。 21 前掲注4、5頁、筆者一部改。 (「その事件」の範囲) ・「この「その事件」の意義については、当該訴訟事件に限るという見解もありますが、拘束力が将来の行政庁の活動を拘束するものであることから、当該訴訟事件に限らず、当該処分取消に係る行政処分の対象たる法律関係という意味に解する見解が有力です(『条解 行政事件訴訟法』(第4版)(弘文堂)691、692頁、園部逸夫編『注解行政事件訴訟法』(有斐閣)430頁)。 この点につき、遺産分割後の更正においては、遺産分割前において確定すべき税額に係る前件の訴訟とは同じ事件を構成しないとし、それを前提として、本件は、拘束力を受ける「その事件」該当しないとする見解も考えられます。 しかしながら、本件判決では、「その事件」の範囲について、「後の相続税法32条1号に基づく更正の請求又は同法35条3項に基づく更正処分に係る事件についても、同一の被相続人からの相続により取得した財産に係る相続税の課税価格及び相続税額に関する事件であることに変わりがない以上、行政事件訴訟法33条1項にいう『その事件』として」取り扱われる旨判示しており、遺産分割前後を含めて一つの「その事件」ととらえているものと考えられます。この判断は「その事件」の範囲を、当該訴訟事件に限るのではなく、同一の法律関係まで及ぶとする上記の有力な見解と同様の立場を採っているように思われます。 この点については、前述の通説的見解のように、行政事件訴訟法33条の趣旨を、取消判決があった場合には、行政庁に当該判決の趣旨に従った行動を義務付け救済の実効性を保障する点にあると捉えるのであれば、少なくとも、当該訴訟事件に限ると考えるのは狭すぎるように思われます。むしろ、相続税法は、遺産分割前も遺産分割後も同一の相続に基づく課税であるからこそ、55条や32条のような規定を設けて、個別の申告ではなく、遺産分割後の課税を更正等として扱っているのであり、このように同法が遺産分割前と遺産分割後を同一の相続に基づく一つの課税関係として捉えられていることかすれば、本件判決で裁判所の示した「その事件」に係る判断は合理的であると考えられます。」 22 前掲注4、5頁、筆者一部改。 (拘束力を生じる判断の範囲) ・「まず、取消判決の拘束力が及ぶ範囲は、判決理由中の判断のうち、「判決主文が導き出されるのに必要な事実認定及び法律判断にわたる」ものとされています(最判平成4年4月28日判例タ 784-178)。つまり、主文に含まれる判断を導くために不可欠な理由中の判断であり、法的判断のみならず、事実認定まで及ぶものの、判決の結論と直接関係しない傍論や要件事実を認定する過程における間接時事についての認定には拘束力は生じないものとされています(宇賀・行政法概説U 280頁、『条解 行政事件訴訟法』691頁)」 ・「行政事件訴法33条1項に基づき拘束力を生じる判断の範囲については、課税処分の取消判決において、違法の理由として金額が示されても、その金額が行政庁を拘束するわけではないとする議論もあります。(南博方編『注釈行政訴訟法』(有斐閣)310頁)。しかしながら、下級審裁判例においては、所得税の認定に関する課税処分の取消訴訟は、所得額の認定方法そのものを争うことを主眼とするのであることから、判決は合理的な認定方法がどのようなものであるかを確定し、課税庁がそれに拘束されて所得額をあらためて算定しなくてはならなくなる旨判示するもの(東京地裁昭和38年10月30日行政事件判例集 14-10-1766)や、土地課税台帳の登録価格に関する固定資産評価審査委員会の決定の全部を取消す判決の理由中で、適正な時価が認定されているときは、同委員会は、この判決の認定に拘束を受ける旨判示するものもあります(東京高判平成13年12月26日判タ1094-130)。」 ・「本件判決は、前件判決おいて「従前の更正処分について、争点となり、その認定された株式の評価方法及び価額が判決により変更されるに至った個々の財産については、課税庁において、同判決における評価方法ないし価額を基礎として課税価格を算定しなくてはならない」として、前件判決において認定された財産の評価方法及び価額についての拘束力を認めています。このような判断は、拘束力の範囲に関する前記下級審判例の判断とも整合するものであり、この観点からも株式の評価方法として類似業種比準法を用いるべきとされている点は、拘束力を有すると考えることは合理的と考えられます。」 ・「行政事件訴訟法33条1項の規定により、行政機関に対し、類似業種比準方式を用いての株式の評価をもって処理を行う拘束力が生じると考えられ、更正の請求を当初申告に基づく株価に従って評価することを行政事件訴訟法33条1項に反するとすることには合理的であると考えられます。」 ・「B社株式については、前件判決では1株31,189円と認定されていましたが、更正の請求においては19,132円と認定されています。この点、本件判決は、A社株式の評価方法ないし価額に係る説示を前提に正しく計算すれば、19,132円とされるべきものであり、前件判決認定の価額は、判決に計算間違い、誤記等があった場合に関する民事訴訟法257条の更正決定の対象となりうると指摘しています。その観点から、「拘束力は、上記の計算違いによる金額についてではなく、上記の説示における評価方法に基づいた正しい計算による金額について生ずる」と判示して、更正の請求において示された1株19,132円を正しい金額と認定しています。」 23 LEX/DB【文献番号】27811171、最高裁平成4年4月28日判決。 |
Z 小括 租税法律主義の機能は租税の納付を求められる国民が、その経済生活において「法的安定性」と「予測可能性」を確保することである。24 法令が明確に課税することを規定していないものについては、課税されないことが原則である。過大な税負担が明らかな場合には、それは是正されるべきである。法の定めた方法以外にその是正を許さないならば、納税義務者の利益を著しく害すると認められる特段の事情がある場合には、租税法の定める以外の是正方法の存在を認めるべきである。25 一定要件に該当する法定申告期限後における遺産分割確定による「配偶者の税額軽減」、「小規模宅地等の課税価格の特例」の更正の請求は一定要件に該当する場合に認められる。本件においては国税通則法施行令第6条第1項第5号の事由に該当する「国税通則法第23条第2項第3号の更正の請求」と「相続税法32条1号の更正の請求」の関連において何らかの検討をする必要があったものと思われる。 国税通則法71条(国税の更正、決定等の期間制限の特例)の規定があり、国は一定要件のもと、更正等の5年の期間制限後においても、当該裁決等があった日から6月間に限り、更正決定等ができることになっている。 本件判決において判断が示された「相続税法32条1号の更正の請求」と「行政事件訴訟法33条1項の拘束力」との関係については、「更正の請求において主張しうる事由」を実質的に拡大する結果になるのではないか、という点が問題となりえる。国税通則法23条1項(平成24年改正前)は、当初申告における課税標準や税額計算に誤りがあった場合について、1年間(現行法は5年間)の期間制限を設けて更正の請求を認めているところ、本件判決は、実質的にその例外的な取り扱いを許容することになるのではないかとの指摘等が考えられる。26 しかし、国税通則法114条に、国税に関する法律に基づく処分に関する訴訟についいては、一定の場合を除き「行政事件訴訟法」等に従うと規定され、同法33条1項で、処分又は裁決を取り消す判決は、「その事件」について、処分又は裁決をした行政庁その他の関係行政庁を「拘束する」のであるから、「Y 取消判決(前件判決)の拘束力」において検討した理由に基づき、裁判所は「前件判決」確定以後は、「更正の請求の排他性」27 を超越して、当該拘束力が及ぶものとして、原告の主張内容での 一般法である行政事件訴訟法により国税通則法、相続税法等が修正を受けることに不合理はない。本判決は、相続税法32条1号及び同法35条3項が想定していなかった事案について、行政事件訴訟法33条1項にいう「拘束力」が及ぶという根拠により、状況に応じた柔軟な法解釈をおこない、合理的な結論を導いた意義深い判決である。28 (注)25 前掲注5、3頁、筆者一部改。 (拘束力と更正の請求の排他性) ・「本件の未分割遺産についての相続税の当初申告から分割後の更正の請求・更正処分に至る過程おいて、法32条1号ではなく、国税通則法(以下、国通法)23条による更正の請求によって当初申告額の課税価格と税額を減額させる可能性により、法32条1号による更正の請求で主張できる事由が制約されないか検討する必要がある。 たしかに、当初申告に対して増額更正処分なされる前に国通法23条1項(平成24年改正前)による更正の請求(改正前:法定納期限から1年)をもって前訴判決が認定した評価方法を基礎に減額更正処分を求めることは理論的には可能であるが、当時の判例・実務や財産評価通達189(平成25年改正前)の存在といった状況から、これを選択しなかったことは無理からぬことであり、またこれを選択しなかったことが分割後の本件の検討に影響を与えることはない。 いうまでもなく租税法律主義のもとで、法の定める以上の過大な税負担を求めることは許されず、過大な税負担が発生している場合には、それは是正されなければならい。しかし、税収の安定的で速やかな確保という公共性と税務行政の大量性という特徴の下で、この是正の方法と期間につき一定の法制度的制限がおかれることにも合理性がある。しかし、租税法律主義の観点からは、是正が原則であり、是正の制約は例外である。過大な税負担について租税法の定める是正方法につき、「法の定めた方法以外にその是正を許さないならば、納税義務者の利益を著しく害すると認められる特段の事情がある」場合には、租税法の定める以外の是正方法の存在を認めるべきとする最判昭39.10.22(民集18巻8号1762頁)には、更正の請求の排他性の硬直的運用を戒めるとともに、更正の請求の運用についても是正と制限における原則と例外の逆転的運用となるような事態の発生を戒める趣旨を読み取ることができる。本件において国通法23条1項による更正の請求は、法定納期限から1年の間理論的にはできたにしても、以上のような事情から、これがXの主張内容での法32条1号の適用を排除するものではない。」 26 前掲注4、6頁、筆者一部改。 (その他の問題点) ・「この点については、本件判決で示した取扱いは、行政訴訟による処分の取消による救済を実質のあるものとすべく行政事件訴訟法33条1項が定められたことの反射的な効果であって、必ずしも不合理とは考えられないようにも思われます。また、税務訴訟も行政訴訟の一つである以上、特別法としての租税法規に、特段、行政事件訴訟法33条1項の効力を抑制すべき根拠がない限りは、一般法である行政事件訴訟法による修正を受ける場面が生じることは不合理ではないと考えられます。」 27 金子宏「租税法」第23版、932頁、946頁、(2019年、弘文堂)筆者一部改。 ・「過大な申告をした場合については、更正の請求の手続を通じて問題を解決すべきこととされている(更正の請求の原則的排他性)から、錯誤が重大であって、更正の請求以外にその是正を許さないならば納税義務者の利益を著しく害すると認められる特段の事情がある場合を除いては、民法95条の適用は排除されると解すべきであろう。」 ・「法がわざわざ更正の請求の手続きを設けた趣旨にかんがみると、申告が過大である場合には、原則として、他の救済手段によることは許されず、更正の請求の手続きによらなければならないと解すべきであろう。(中略)これを「更正の請求の原則的排他性」と呼ぶことができる。」(筆者注、「原則的排他性」には、例外を認める余地があることを示唆している。) 28 橋本浩史「相続税法32条1号に基づく更正の請求及び同法35条3項に基づく更正処分の際の計算において基礎とすべき価額が問題となった事例」税経通信、(2018.09)、156頁、筆者一部改。
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別添1 取引相場のない株式等の評価(大会社の株式保有割合による株式保有特定会社の判定基準) 東京高等裁判所平成25年2月28日判決があったことを受け、現下の上場会社の株式等の保有状況等に基づき、評価通達189(2)における大会社の株式保有割合による株式保有特定会社の判定基準を「25%以上」から「50%以上」に改正した。(評価通達189、明細書通達=改正) 1 従来の取扱い 取引相場のない株式の発行会社の中には、類似業種比準方式における標本会社である上場会社に比べて、資産構成が著しく株式等に偏った会社が見受けられる。このような会社の株式については、一般の評価会社に適用される類似業種比準方式により適正な株価の算定を行うことが期し難いものと考えられることから、評価通達189((特定の評価会社の株式))(2)では、株式保有割合(評価会社の有する各資産の価額の合計額のうちに占める株式等の価額の合計額の割合)が25%以上である大会社を株式保有特定会社とし、その株式の価額を類似業種比準方式ではなく、原則として純資産価額方式で評価することとしていた(評価通達189−3((株式保有特定会社の株式の評価)))。 2 通達改正の概要等 (1) 東京高等裁判所判決の概要 東京高等裁判所平成25年2月28日判決(以下「高裁判決」という。)において、この株式保有特定会社の株式の価額を原則として純資産価額方式により評価すること自体は合理的であると認められるものの、平成9年の独占禁止法の改正に伴って会社の株式保有に関する状況が、株式保有特定会社に係る評価通達の定めが置かれた平成2年の評価通達改正時から大きく変化していることなどから、株式保有割合25%という数値は、もはや資産構成が著しく株式等に偏っているとまでは評価できなくなっていたといわざるを得ないと判断された。 (注)高裁判決においては、株式保有割合に加えて、その企業としての規模や事業の実態等を総合考慮して判断するとしているが、これは、改正前の評価通達189(2)における大会社の株式保有割合による株式保有特定会社の判定基準(以下「大会社の判定基準」という。)(25%以上)が合理性を有していたものとはいえないことを前提としているためであり、「大会社の判定基準」が合理性を有するものであれば、企業としての規模や事業の実態等を総合考慮することまでを求めるものではないと解される。 (2) 通達改正の概要 当該高裁判決を受け、現下の上場会社の株式等の保有状況等、すなわち、有価証券報告書から集計した上場会社の株式保有割合を確認した結果、大多数の上場会社の株式保有割合が50%未満であることなどから、大会社の判定基準を「25%以上」から「50%以上」に改正することとした。 (3) 明細書通達の改正 本改正に伴い、明細書通達の「第2表 特定の評価会社の判定の明細書」における「2. 株式保有特定会社」の「判定要素」、「判定基準」及び「判定」欄について改正した。 (4) 適用時期等 本改正に係る改正後の評価通達(大会社の判定基準)は、平成25年5月27日以後に相続、遺贈又は贈与(以下「相続等」という。)により取得した財産を評価する場合に適用するほか、本改正が判決に伴うものであり、過去の相続税等についても、通則法第23条第2項第3号の規定に基づき更正の請求をすることができる(注)ことを踏まえ、平成25年5月27日以後に相続税等の申告をする者が、平成25年5月27日前に相続等により取得した財産を評価する場合にも適用することができる。 (注)本改正は判決に伴うものであるため、通則法施行令第6条第1項第5号に規定する更正の請求の事由に該当し、過去に遡って改正後の評価通達を適用することにより、過去の相続税等の申告の内容に異動が生じ相続税等が納めすぎになる場合には、通則法第23条第2項第3号の規定に基づき、本改正を知った日の翌日から2月以内に所轄の税務署に更正の請求をすることができる。 なお、法定申告期限等から既に5年(贈与税の場合は6年)を経過している相続税等については、法令上、減額できない(本改正に係る改正後の評価通達を適用できない)ことに留意する。 (注)https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hyoka/130528/pdf/01.pdf(2019/11/18) (別紙)主な関係法令の定め LEX/DB【文献番号】25550456 ○国税通則法(平成16年法律第14号による改正前のもの) (更正の請求) 第23条 納税申告書を提出した者は、次の各号の一に該当する場合には、当該申告書に係る国税の法定申告期限から1年以内に限り㊟、税務署長に対し、その申告書に係る課税標準等又は税額等(当該課税標準等又は税額等に関し次条又は第26条(再更正)の規定による更正(以下この条において「更正」という。)があった場合には、当該更正後の課税標準又は税額等)につき更正をすべき旨の請求をすることができる。 一 当該申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったことにより、当該申告書の提出により納付すべき税額(当該税額に関し更正があった場合には、当該更正後の税額)が過大であるとき。 (㊟ 改正後、法定申告期限から5年(第2号法人税の場合は9年)) 二・三(略) 2〜7(略) ○相続税法(平成16年法律第84号による改正前のもの) (更正の請求の特則) 第32条 相続税又は贈与税について申告書を提出した者又は決定を受けた者は、次の各号のいずれかに該当する事由により当該申告又は決定に係る課税価格及び相続税額または贈与税額(当該申告書を提出した後又は当該決定を受けた後修正申告書の提出又は更正があった場合には、当該修正申告又は更正に係る課税価格及び相続税額又は贈与税額が過大となったときは、当該各号に規定する事由が生じたことを知った日に翌日から4月以内に限り、納税地の所轄税務署長に対し、その課税価格及び相続税額又は贈与税額につき国税通則法第23条第1項(更正の請求)の規定による更正の請求をすることができる。 一 第55条の規定により分割されていない財産について民法(第904条の2(寄与分)を除く。)の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従って課税価格が計算されていた場合において、その後当該財産の分割が行われ、共同相続人又は包括受遺者が当該分割により取得した財産に係る課税価格が当該相続分又は包括遺贈の割合に従って計算された課税価格と異なることとなったこと。 二〜八(略) (更正及び決定の特則) 第35条(略) 2(略) 3 税務署長は、第32条第1号から第5号までの規定による更正の請求に基づき更正をした場合において、当該請求をした者の被相続人からの相続または遺贈に財産を取得した者(略)につき次の事由があるときは、当該事由に基づき、その者に係る課税価格又は相続税額の更正又は決定をする。(ただし書略) 一 当該他の者が第27条若しくは第29条の規定による申告書(これらの申告書に係る期限後申告書及び修正申告書)を提出し、又は相続税について決定を受けた者である場合において、当該申告又は決定に係る課税価格又は相続税額(当該申告又は決定があった後修正申告書の提出又は更正があった場合には、当該修正申告又は更正に係る課税価格又は相続税額)が当該請求に基づく更正の起因となった事実を基礎として計算した場合おけるその者に係る課税課価格又は相続税額と異なるこことなること。 二 当該他の者が前号に規定する者以外の者である場合において、その者つき同号に規定する事実を基礎としてその課税課価格及び相続税額を計算することにより、その者が新たに相続税を納付すべきこととなること。 4(略) (未分割遺産に対する課税) 第55条 相続若しくは包括遺贈により取得した財産に係る相続税について申告書を提出する場合又は当該財産に係る相続税について更正若しくは決定をする場合において、当該相続又は包括遺贈により取得した財産の全部又は一部が共同相続人又は包括受遺者によってまだ分割されていないときは、その分割されていない財産については、各共同相続人又は包括受遺者が民法(第904条の2(寄与分)を除く。)の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従って当該財産を取得したものとしてその課税価格を計算するものとする。ただし、その後に当該財産の分割があり、当該共同相続人又は包括受遺者が当該分割により取得した財産に係る課税価格が当該相続分又は包括遺贈の割合に従って計算された課税価格と異なることとなった場合においては、当該分割により取得した財産に係る課税価格を基礎として、納税義務者において申告書を提出し、若しくは第32条の更正の請求をし、又は税務署長において更正若しくは決定をすることを妨げない。 ○行政事件訴訟法 (抗告訴訟) 第3条 この法律において「抗告訴訟」とは、行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟をいう。 2 この法律において「処分の取消しの訴え」とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(次項に規定する裁決、決定その他の行為を除く。以下単に「処分」という。)の取消しを求める訴訟をいう。 3 (以下略) (取消判決等の効力) 第33条 処分又は裁決を取り消す判決は、その事件について、処分又は裁決をした行政庁その他の関係行政庁を拘束する。 2〜4(略) ○国税通則法 (行政事件訴訟法との関係) 第114条 国税に関する法律に基づく処分に関する訴訟については、この節及び他の国税に関する法律に別段の定めがあるものを除き、行政事件訴訟法(昭和37年法律第139号)その他の一般の行政事件訴訟に関する法律の定めるところによる。 ○国税通則法 (更正の請求) 第23条 1(略) 2 納税申告書を提出した者又は第25五条(決定)の規定による決定(以下この項において「決定」という。)を受けた者は、次の各号のいずれかに該当する場合(納税申告書を提出した者については、当該各号に定める期間の満了する日が前項に規定する期間の満了する日後に到来する場合に限る。)には、同項の規定にかかわらず、当該各号に定める期間において、その該当することを理由として同項の規定による更正の請求(以下「更正の請求」という。)をすることができる。 一 〜 二(略) 三 その他当該国税の法定申告期限後に生じた前二号に類する政令で定めるやむを得ない理由があるとき 当該理由が生じた日の翌日から起算して2月以内 3 (略) ○国税通則法施行令 (更正の請求) 第6条 法第23条第2項第3号(更正の請求)に規定する政令で定めるやむを得ない理由は、次に掲げる理由とする。 一 〜 四(略) 五 その申告、更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となつた事実に係る国税庁長官が発した通達に示されている法令の解釈その他の国税庁長官の法令の解釈が、更正又は決定に係る審査請求若しくは訴えについての裁決若しくは判決に伴つて変更され、変更後の解釈が国税庁長官により公表されたことにより、当該課税標準等又は税額等が異なることとなる取扱いを受けることとなつたことを知つたこと。 2 (以下略) ○相続税法 (配偶所に対する相続税額の軽減) 第19条の2 1 (略) 2 前項の相続又は遺贈に係る第27条の規定による申告書の提出期限(以下この項において「申告期限」という。)までに、当該相続又は遺贈により取得した財産の全部又は一部が共同相続人又は包括受遺者によつてまだ分割されていない場合における前項の規定の適用については、その分割されていない財産は、同項第2号ロの課税価格の計算の基礎とされる財産に含まれないものとする。ただし、その分割されていない財産が申告期限から3年以内(当該期間が経過するまでの間に当該財産が分割されなかつたことにつき、当該相続又は遺贈に関し訴えの提起がされたことその他の政令で定めるやむを得ない事情がある場合において、政令で定めるところにより納税地の所轄税務署長の承認を受けたときは、当該財産の分割ができることとなつた日として政令で定める日の翌日から4月以内)に分割された場合には、その分割された財産については、この限りでない。 ○相続税法施行令 (配偶者に対する相続税額の軽減の場合の財産分割の特例) 第4条の2 法第19条の2第2項に規定する政令で定めるやむを得ない事情がある場合は、次の各号に掲げる場合とし、同項に規定する政令で定める日は、これらの場合の区分に応じ当該各号に定める日とする。 一 当該相続又は遺贈に係る法第19条の2第2項に規定する申告期限(以下次項までにおいて「申告期限」という。)の翌日から3年を経過する日において、当該相続又は遺贈に関する訴えの提起がされている場合(当該相続又は遺贈に関する和解又は調停の申立てがされている場合において、これらの申立ての時に訴えの提起がされたものとみなされるときを含む。) 判決の確定又は訴えの取下げの日その他当該訴訟の完結の日 二 当該相続又は遺贈に係る申告期限の翌日から3年を経過する日において、当該相続又は遺贈に関する和解、調停又は審判の申立てがされている場合(前号又は第四号に掲げる場合に該当することとなつた場合を除く。) 和解若しくは調停の成立、審判の確定又はこれらの申立ての取下げの日その他これらの申立てに係る事件の終了の日 三 当該相続又は遺贈に係る申告期限の翌日から3年を経過する日において、当該相続又は遺贈に関し、民法(明治29年法律第89号)第907条第3項(遺産の分割の協議又は審判等)若しくは第908条(遺産の分割の方法の指定及び遺産の分割の禁止)の規定により遺産の分割が禁止され、又は同法第915条第1項ただし書(相続の承認又は放棄をすべき期間)の規定により相続の承認若しくは放棄の期間が伸長されている場合(当該相続又は遺贈に関する調停又は審判の申立てがされている場合において、当該分割の禁止をする旨の調停が成立し、又は当該分割の禁止若しくは当該期間の伸長をする旨の審判若しくはこれに代わる裁判が確定したときを含む。) 当該分割の禁止がされている期間又は当該伸長がされている期間が経過した日 四 前3号に掲げる場合のほか、相続又は遺贈に係る財産が当該相続又は遺贈に係る申告期限の翌日から3年を経過する日までに分割されなかつたこと及び当該財産の分割が遅延したことにつき税務署長においてやむを得ない事情があると認める場合 その事情の消滅の日 ○租税特別措置法 (小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例) 第69条の4 1〜3略 4 第1項の規定は、同項の相続又は遺贈に係る相続税法第27条の規定による申告書の提出期限(以下この項において「申告期限」という。)までに共同相続人又は包括受遺者によつて分割されていない特例対象宅地等については、適用しない。ただし、その分割されていない特例対象宅地等が申告期限から3年以内(当該期間が経過するまでの間に当該特例対象宅地等が分割されなかつたことにつき、当該相続又は遺贈に関し訴えの提起がされたことその他の政令で定めるやむを得ない事情がある場合において、政令で定めるところにより納税地の所轄税務署長の承認を受けたときは、当該特例対象宅地等の分割ができることとなつた日として政令で定める日の翌日から4月以内)に分割された場合(当該相続又は遺贈により財産を取得した者が次条第1項の規定の適用を受けている場合を除く。)には、その分割された当該特例対象宅地等については、この限りでない。 (以下略) (注)政令は相続税法4条の2準用 |
資料(別表他) (別表1) 本件各株式の価格等
(筆者注)・東京地裁、平成24年3月2日判決「3 前提事実」より抜粋 ・番号1 株式会社A工業所は昭和23年に設立された合成樹脂及び金属等による容器・キャップ・医療用具・医薬部外品等の製造および販売等を目的とする資本金の額が4億3200万円の株式会社である。本件相続の開始の日の直前期末である平成15年5月31日の時点における同社の総資産価額(帳簿価格)は2120億7668万0565円、従業員数は5291名であり、当該直前期末以前1年間である平成14年6月1日から平成15年5月31日までの事業年度における同社の取引金額は1882億0001万0637円であって、同社は大会社に当たる。 ・番号2 B株式会社は、昭和41年に設立された不動産の取得及び管理等を目的とする資本金の額が9億9000万円の株式会社である。本件相続の開始の日の直前期末である平成15年2月28日の時点における同社の総資産価額(帳簿価格)は98億2222万8821円、従業員数は5名以下であり、当該直前期末以前1年間である平成14年3月1日から平成15年2月28日までの事業年度における同社の取引金額は3億6845万2448円であって、同社は中会社に当たる。 ・本件相続の開始の時点(平成16年2月28日)において、株式会社A工業所は、B株式会社の発行済株式総数198万株のうち165万9240株(発行済株式総数の83.8%)を有しており、また、B株式会社は、株式会社A工業所の発行済株式総数864万株のうち645万3400株(発行済株式総数の約74.7%)を有していたものである。なお、株式会社A工業所の株式(以下「A社株式」という。)及びB株式会社の株式(以下「B社株式」といい、A社株式と併せて「本件各会社株式」という。)は、いずれも取引相場のない株式に当たるところ、本件相続の開始の時点におけるA社株式の価額を大会社についての原則的評価方式である類似業種比準方式を用いて評価すると、1株当たり4553円(上記「別表1」では4653円)となる。 ・本件相続財産には、A社株式64万5400株及びB社株式17万8200株が含まれている。 |
(図) 29
(注)29 LEX/DB【文献番号】26012243(平成20年7月16日裁決)、(図2)、筆者一部改 (別表2) 課税の経緯 (単位:円)
(いずれも、異議決定により一部取り消された後のもの)を取り消す。 |
【本件前提事実】 (1)e(以下「本件被相続人」という。)が平成16年2月28日に死亡したことにより開始した本件相続に係る相続人である原告(本件被相続人の長男)、本件被相続人の長女、三女,四女及び二男(以下「長女ら」という。)並びに本件被相続人の二女及び五女(以下「二女ら」といい、原告、長女ら、二女らの計7名を併せて「本件相続人ら」という。)は、本件相続に係る相続税について、同年12月27日、遺産分割が成立していないことから相続税法55条に基づき民法の規定による相続分の割合(各7分の1)に従って財産を取得したものとして、江東東税務署長に対し申告(本件申告)をした。 その際、原告は、別表2の順号1欄記載のとおり、課税価格を22億6374万4000円、納付すべき税額を10億7095万円とする申告をしており、本件各株式の価額については別表1の本件申告欄記載のとおりとしていた。 (2)江東東税務署長は、平成19年2月13日、原告に対し、本件各株式の一部の価額が過少であるとして、別表2の順号2欄記載のとおり、課税価格を41億2068万円、納付すべき税額を19億9989万9200円とする更正処分をした。 (3)原告は、平成19年4月12日、上記(2)の更正処分の取消しを求めて、東京国税局長に対する異議申立てをしたところ、同局長は,同年6月27日、別表2の順号4欄記載のとおり、課税価格を41億2059万2000円、納付すべき税額を19億9985万4900円として、上記(2)の更正処分の一部を取り消す旨の異議決定をした。 (4)原告は,平成19年8月1日、上記(3)の異議決定によりその一部が取り消された後の更正処分の取消しを求めて、国税不服審判所長に対する審査請求をしたところ、同所長は、平成20年7月16日、原告の審査請求を棄却する旨の裁決をした。(LEX/DB【文献番号】26012243参照) (5)原告は、平成21年1月21日、被告を相手に、別表2の順号7欄記載のとおり、上記(4)の更正処分の取消しを求める訴えを東京地方裁判所に提起した(前件訴訟)。なお、原告のほか、長女らも、それぞれ申告後に受けた更正処分につき、異議申立て及び審査請求を経て、取消しを求める訴えを提起し、前件訴訟の共同原告となっていた。 (6)江東東税務署長は、平成23年2月28日、原告に対し、別表2の順号8欄記載のとおり、課税価格を40億6089万円、納付すべき税額を19億7000万9300円として、前記(4)の更正処分の一部を取り消す減額更正処分をした。 (7)東京地方裁判所は、平成24年3月2日、上記(6)の減額更正処分によりその一部が取り消された後の更正処分(前件更正処分)のうち、本件申告に係る納付すべき税額10億7095万円を超える部分を取り消す旨の判決(前件第1審判決)を言い渡した。 被告は、上記判決を不服として控訴したが、東京高等裁判所は、平成25年2月28日、被告の控訴を棄却する旨の判決(前件控訴審判決)を言い渡し、これらの判決(前件判決)は、同年3月15日に確定した。 前件判決の判決書上、本件各株式の価額は別表1の前件判決欄記載のとおりと記載されていた。 (8)前件訴訟では(なお,第1審及び控訴審を通じ、以下の争点及び判断の要旨に変更はない。)、本件各株式のうち、株式会社A工業所(別表1の番号1)及びB株式会社(同番号2)の各株式の評価方法ないし価額が争われ、〔1〕株式会社A工業所の株式については、同株式が取引相場のない株式に当たり、同社が財産評価基本通達(以下「評価通達」という。)にいう大会社に該当することを前提に、同社が株式保有特定会社であるとして評価通達所定の純資産価額方式によってその価額を評価すべきか否かが、〔2〕B株式会社の株式については、同株式が取引相場のない株式に当たり、同社が株式保有特定会社であり、純資産価額方式によってその価額を評価すべきであることを前提に、同社が株式会社A工業所の株式を保有していることを踏まえて、B株式会社の株式の価額をいくらと評価すべきかが争われた。 この点、評価通達では、取引相場のない株式の発行会社の中には、評価通達所定の類似業種比準方式によって株式の価額を評価する場合における標本会社である上場会社に比べて、資産構成が著しく株式等に偏った会社が見受けられるところ、このような会社の株式については、一般の評価会社に適用される類似業種比準方式により適正な株価の評価を行うことが期し難いものと考えられることから、大会社については、株式保有割合(評価会社の有する各資産の価額の合計額のうちに占める株式等の価額の合計額の割合)が25%以上である評価会社を株式保有特定会社とし,その株式の価額を類似業種比準方式ではなく、原則として純資産価額方式で評価することとしていた。 前件判決は、その理由中で、株式保有特定会社の株式の価額を原則として純資産価額方式により評価すること自体は合理的であると認める一方で、平成9年の独占禁止法の改正に伴って会社の株式保有に関する状況が株式保有特定会社に係る評価通達の定めが置かれた平成2年の評価通達改正時から大きく変化していることなどから、大会社についての株式保有割合25%以上という基準は、もはや資産構成が著しく株式等に偏っているとまでは評価できなくなっていたと判断した上で、株式会社A工業所の株式保有割合が約25.9%等であること等を踏まえた上で、同社が株式保有特定会社に該当せず、純資産価額方式によってその株式の価額を評価すべきではなく、類似業種比準方式によって評価すべきであるとの判断をし、同社の株式の価額を別表1の前件判決欄記載のとおりと認定した。 また、前件判決に係る判決書上、B株式会社の株式については、以上の説示を前提とした上で、別表1の前件判決欄記載のとおりの額と認定する旨が記載されていた。ただし、同社の株式の価額については、株式会社A工業所に係る上記の説示を前提に、評価通達所定の純資産価額方式によって正しく計算をすれば、別表1の本件更正請求欄記載のとおりの額と認定されるべきものであった。 他方で,本件各株式のうち,上記各社以外の別表1番号3ないし7の各社の株式については、前件更正処分における価額である別表1の前件更正処分欄記載のとおりの額とすることについて当事者間に争いがなく、前件判決においてもその価額をもって計算がされている。 その上で、前件判決は、上記の各価額等を基礎として、本件相続に係る原告の課税価格(取得金額)を18億8786万1000円、納付すべき相続税額を 8億7873万3800円と認定し、当該相続税額は本件申告に係る金額の範囲内であるから、前件更正処分は本件申告に係る納付すべき税額を超えるその全部が違法なものであると判示した。 (9)国税庁長官は、前件判決を受けて、現下の上場会社の株式等の保有状況等に基づき、評価通達における大会社の株式保有割合による株式保有特定会社の判定基準を25%以上から50%以上に改正し、平成25年5月、これを公表した。 なお、原告を含む本件相続人らは、更正処分の法定の制限期間が経過していたことから、上記の評価通達改正に伴う更正の請求をすることはできなかった。 (10)本件各株式を含む本件被相続人の遺産に係る遺産分割申立事件について、平成26年1月16日、東京家庭裁判所において遺産分割調停(以下「本件調停」という。)が成立した。 なお、本件調停の成立により、原告は本件各株式の7分の6を取得するに至った。 (11)二女らは、平成26年2月21日、江東東税務署長に対し、本件調停の成立を理由として,相続税法32条1号に基づく更正の請求をした。 (12)原告は、 平成26年5月16日、江東東税務署長に対し、本件調停の成立を理由として、別表2の順号10欄記載のとおり、課税価格を9億6080万5000円、納付すべき税額を4億4199万0400円として、相続税法32条1号に基づく更正の請求(本件更正請求)をした。 その際、原告は、本件各株式の価額を別表1の本件更正請求欄記載のとおり、B株式会社を除く各社の各株式については、前件判決で認定された額と同額、B株式会社の株式の価額については、前記(8)のとおり前件判決の説示を前提に正しく計算した場合の価額としていた。 (13)江東東税務署長は,平成26年 6月20日、前記(11)の更正の請求に基づき、二女らに対し減額更正処分をした。 (14)江東東税務署長は,平成26年11月12日、原告に対し、本件更正請求につき、本件各株式の価額に係る部分については、本件申告における株式の評価の誤りに係る是正を求めるもので、相続税法32条1号に基づく更正の請求によっては是正し得ないことなどを理由として、更正をすべき理由がない旨の通知処分(本件通知処分)をした。 また、江東東税務署長は、前記(13)の二女らに対する減額更正処分に伴い、平成26年11月12日、原告に対し、別表2の順号12欄記載のとおり、 課税価格を49億0410万9000円、納付すべき税額を23億2567万1800円として、相続税法35条3項に基づく増額更正処分(本件更正処分)をした。 本件更正処分等において、江東東税務署長は、本件各株式の価額を別表1の本件更正処分等欄記載のとおり、本件申告における価額と同額としていた。 (15)原告は、平成26年12月12日、江東東税務署長に対し、本件更正処分等を不服として異議申立てをしたところ、同税務署長は、平成27年2月12日、原告の異議申立てを棄却する旨の異議決定をした。 さらに、原告は、平成27年3月13日、本件更正処分等を不服として審査請求をしたところ、国税不服審判所長は,平成28年2月12日、原告の審査請求を棄却する旨の裁決をした。 (16)原告は、平成28年7月29日、本件訴えを提起した。 (筆者注)順号9 ・(控訴審)判決/東京高等裁判所、平成25年2月28日(LEX/DB【文献番号】25500443)、控訴人の控訴を棄却。 ・(第一審)判決/東京地方裁判所、平成24年3月 2日(LEX/DB【文献番号】25481239)、更正及び加算税賦課決定取消請求事件、原告らの請求認容。 【事案の概要】 原告らが、本件相続に係る相続税の申告をしたところ、K税務署長から各相続税に係る更正処分および各過少申告加算税賦課決定処分を受けたことにつき、本件各更正処分は、本件相続に掛かる相続財産中の株式会社A社及びB社の各株式の価額の評価額を誤ってされたものであり、相続税法22条に違反するものである等として、本件各処分の取消しを求めた事案において、本件相続の開始時のA社については、その株式の価額の評価において類似業種比準方式を用いるべき前提を欠く株式保有特定会社に該当するものとは認めるに足りないなどとして、本件相続に係る原告らの納付すべき税額は、いずれも本件申告において原告らが申告した納付すべき税額の範囲内であるから、本件各更正処分は、本件申告に係る各納付すべき税額を超えるその全部が違法なものであり、また、本件各賦課決定処分もまた、その全部が違法なものであるとして、原告らの請求を認容した事例。 ・別添1参照、「取引相場のない株式の評価における大会社の株式保有割合による株式保有特定会社の判断基準について、東京高等裁判所平成25年2月28日判決を受け、上場会社の株式の保有状況等に基づき「25%以上」から「50%以上」に改正した。」、(平25.5.25課評2−20)。 |
更正・決定及び賦課決定のできる期間一覧表
1 移転価格税制に係る法人税の更正・決定等及び贈与税の更正・決定等については6年(措66の4㉑、相36@)。 また、国外転出等の特例(所60の2、60の3)の適用がある場合の所得税について更正決定等については、原則として7年(通70C)。さらに、更生の除斥期間終了の6月以内になされた更正の請求に係る更正又はその更正に伴って行われる加算税の賦課決定については、当該更正の請求があった日から6月を経過する日までにすることができる(通70B)。 2 法人税に係る純損失等の金額についての更正は、平成30年4月1日以後に開始する事業年度において生じるものについては10年、同日前に開始する事業年度については9年とされている。 (期間制限の趣旨) 国税の法律関係において、国の行使し得る権利をいつまでも無制限に認めていては、納税者の法的安定が得られないばかりでなく、国税の画一的執行も期し難くなるので、これに対処するため、賦課権及び徴収権などに関する期間制限が設けられている。その内容は、大量かつ反復的に行われる国税の賦課及び徴収を画一的かつ速やかに処理する必要があること及び国の債権の消滅時効が原則として5年であること(会計法30)を考慮して、国税債権に関する期間制限を賦課権については原則5年(通70)、徴収権についても5年(通72@)と定められている。また、納税者が納め過ぎた税金についての国に対する還付請求権も、徴収権と同様に5年の期間制限を定めている(通74@)。 (https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/kohon/tuusoku/pdf/06.pdf)、88頁から91頁(2019.12.6)、筆者一部改。 ○国税通則法 (国税の更正、決定等の期間制限) 第70条 次の各号に掲げる更正決定等は、当該各号に定める期限又は日から5年(第2号に規定する課税標準申告書の提出を要する国税で当該申告書の提出があつたものに係る賦課決定(納付すべき税額を減少させるものを除く。)については、3年)を経過した日以後においては、することができない。 一 更正又は決定 その更正又は決定に係る国税の法定申告期限(還付請求申告書に係る更正については当該申告書を提出した日とし、還付請求申告書の提出がない場合にする決定又はその決定後にする更正については政令で定める日とする。) 二 課税標準申告書の提出を要する国税に係る賦課決定 当該申告書の提出期限 三 課税標準申告書の提出を要しない賦課課税方式による国税に係る賦課決定 その納税義務の成立の日 2 法人税に係る純損失等の金額で当該課税期間において生じたものを増加させ、若しくは減少させる更正又は当該金額があるものとする更正は、前項の規定にかかわらず、同項第1号に定める期限から10年を経過する日まで、することができる。 3 前2項の規定により更正をすることができないこととなる日前6月以内にされた更正の請求に係る更正又は当該更正に伴つて行われることとなる加算税についてする賦課決定は、前2項の規定にかかわらず、当該更正の請求があつた日から6月を経過する日まで、することができる。 4 次の各号に掲げる更正決定等は、第1項又は前項の規定にかかわらず、第1項各号に掲げる更正決定等の区分に応じ、同項各号に定める期限又は日から7年を経過する日まで、することができる。 一 偽りその他不正の行為によりその全部若しくは一部の税額を免れ、又はその全部若しくは一部の税額の還付を受けた国税(当該国税に係る加算税及び過怠税を含む。)についての更正決定等 二 偽りその他不正の行為により当該課税期間において生じた純損失等の金額が過大にあるものとする納税申告書を提出していた場合における当該申告書に記載された当該純損失等の金額(当該金額に関し更正があつた場合には、当該更正後の金額)についての更正(前2項の規定の適用を受ける法人税に係る純損失等の金額に係るものを除く。) 三 所得税法第60条の2第1項から第3項まで(国外転出をする場合の譲渡所得等の特例)又は第60条の3第1項から第3項まで(贈与等により非居住者に資産が移転した場合の譲渡所得等の特例)の規定の適用がある場合(第117条第2項(納税管理人)の規定による納税管理人の届出及び税理士法(昭和26年法律第237号)第30条(税務代理の権限の明示)(同法第48条の16(税理士の権利及び義務等に関する規定の準用)において準用する場合を含む。)の規定による書面の提出がある場合その他の政令で定める場合を除く。)の所得税(当該所得税に係る加算税を含む。第73条第3項(時効の中断及び停止)において「国外転出等特例の適用がある場合の所得税」という。)についての更正決定等 (国税の更正、決定等の期間制限の特例) 第71条 更正決定等で次の各号に掲げるものは、当該各号に定める期間の満了する日が前条の規定により更正決定等をすることができる期間の満了する日後に到来する場合には、前条の規定にかかわらず、当該各号に定める期間においても、することができる。 一 更正決定等に係る不服申立て若しくは訴えについての裁決、決定若しくは判決(以下この号において「裁決等」という。)による原処分の異動又は更正の請求に基づく更正に伴つて課税標準等又は税額等に異動を生ずべき国税(当該裁決等又は更正に係る国税の属する税目に属するものに限る。)で当該裁決等又は更正を受けた者に係るものについての更正決定等 当該裁決等又は更正があつた日から6月間 二 (以下略) 遺産分割成立後の更正の請求と取消判決の拘束力
相続人関係図(推定) 父(死亡)= 母(被相続人) | ┌―――┬――┬―┴―┬――┬―――┬――┐ | | | | | | | 長男 長女・三女・ 四女・次男 次女・五女 (原告) (長女ら) (次女ら) ↓ ↓ 本件株式 6/7 1/7 →(代償分割) |
<高裁判決> 2 東京高等裁判所 平成30年(行コ)第46号 相続税更正処分等取消請求控訴事件、同附帯控訴事件 令和1年12月4日判決(一部取消、一部変更)(上告受理申立て) LEX/DB 25590202 【判示事項】 (1) 更正の請求に対する理由がない旨の通知処分と増額更正処分とがなされた場合において、増額更正処分のみ取消訴訟の対象とすれば足りるということはできず、通知処分の取消を求める訴えの利益があるとした事例。 (2) 相続税法32条1号に基づく更正の請求においては、原則として、遺産分割によって財産の取得状況が変化したこと以外の事由を主張することはできないとした事例。 (3) 相続税法35条3項に基づく更正処分における課税価格の算定の基礎となる個々の財産の価額は、まずは申告における価額とし、その後に更正処分があった場合で、申告における価額のうち当該更正処分によって変更された価額があるときには、その価額を基礎にすべきであるとした事例。 (4) 相続税法35条3項により相続税特有の後発的事由(遺産分割)を理由になされた増額更正の取消訴訟において、後発的事由を原因としない事情を違法の理由として主張することはできないとした事例。 (5) 申告後の遺産分割に係る更正請求やそれに対する理由なし処分の取消請求において、財産の取得状況の変化以外の事由を主張できると解するのは困難とした事例。 (6) 申告により確定するのは納付すべき税額等や課税標準等であって、遺産の評価は確定しない旨の被控訴人(第一審原告)の主張を排斥した事例。 (7) 行政事件訴訟法33条1項にいう「その事件」とは、取消判決に係る行政処分の対象である法律関係と解するのが相当とした事例。 (8) 本件更正処分等は、前件判決との関係で行政事件訴訟法33条1項にいう「その事件」に該当するとした事例。 (9) 取消判決の拘束力。 (10)前件更正処分が適法かどうかに当たって前件訴訟の判決主文で示された株式の評価方法ないし価額に係る判断には拘束力が生じるとした事例。 (11)課税庁は前件判決で示された個々の財産の評価方法ないし価額に係る判断並びにこれらを基礎として算定される課税価格及び相続税額の判断に拘束されるとした事例。 (12)本件更正処分の取消訴訟において、既に判決によって取り消された前件更正処分が行政事件訴訟法33条1項でいう「その事件」に該当することを否定し得ないとした事例。 (13)課税庁には前件判決における本件各株式の評価方法ないし価額に係る判断を基に本件各処分等をする職務上の権限も義務もない旨の控訴人(第一審被告)の主張は、先行する取消訴訟の実効性を確保して行政の適正を図ろうとする拘束力の趣旨に反するとした事例。 (14)前訴判決に係る評価方法ないし価額に係る判断に拘束力が生じると解することは、単独相続等と比較しても公平を失する旨の控訴人(第一審被告)の主張を排斥した事例。 【判決要旨】 (1) 相続税について、相続人は、遺産分割終了前であっても所定の申告期限までに法定相続分に従って課税価格を計算して申告しなければならないところ、申告後の遺産分割により取得した遺産に係る課税価格が上記計算による課税価格と異なる場合、相続人は、遺産分割の内容に従って課税価格の計算を見直し、それに基づいて更正の請求(相続税法32条1号)をすることができ、そして、更正すべき理由がない旨の通知処分(本件通知処分)は、X(被控訴人・第一審原告)が納税額の減額を求める旨の更正の請求に対し、課税庁において、請求者Xに係る課税標準等又は税額等を全体的に見直した上で、更正請求には理由がない(減額更正をすべきでない)として更正請求を拒否する旨の判断を示したものであり、仮に上記見直しにより算出した税額が申告額より多額になるとしても、通知処分がされただけでは、上記の算出した額が納付すべき税額として確定されるものではなく、納付すべき税額は申告により確定した額のままであって、他方、課税庁は、同条1号ないし5号による更正の請求に基づき更正をした場合、当該相続に係る他の相続人につき同法35条3項各号の事由があるときは、法定の期間内に、その者に係る課税価格又は相続税額の更正等をするところ、本件更正処分は、課税庁が、二女らに対する減額更正処分に伴い、同項に基づいて行ったものであり、本件更正処分(増額更正処分)は、課税標準や税額等を増額変更する処分であって、それにより納付すべき税額を確定する効果を有するところ、このように、通知処分と増額更正処分とは、内容や効果が異なるものであり、更正請求を受けた課税庁が納付すべき税額は申告額より多額であると判断した場合、課税庁はその額を納付すべき税額として確定する増額更正処分のみすればよいとされているわけではないし、通知処分が後の増額更正処分に吸収される旨を定めた規定もなく、したがって、増額更正処分の取消しを求める訴えにおいて、申告税額を超える部分の取消しのみならず申告税額と更正の請求に係る税額との差額部分についても取消しを求めることができると解することは困難であり、これを可能とするような規定も見当たらず、以上によれば、本件においては、本件更正処分のみ取消訴訟の対象とすれば足りるということはできず、本件通知処分取消請求に係る訴えについて訴えの利益が認められるというべきである。 (2) 相続税法32条1号に基づく更正の請求においては、原則として、遺産分割によって財産の取得状況が変化したこと以外の事由、すなわち、申告又は従前の更正処分における個々の財産の価額の評価に誤りがあったこと等を主張することはできないものと解され、その結果として、同号に基づく更正の請求上、課税価格の算定の基礎となる個々の財産の価額は、まずは申告における価額とし、その後に更正処分があった場合で、申告における価額のうち当該更正処分によって変更された価額があるときには、その価額を基礎にすべきであると解される。 (3) 相続税法35条3項は、更正の特則として、相続税について、一部の相続人からの同法32条1号の更正の請求に基づき減額更正処分がされた場合において、その余の相続人について、当該減額更正処分の「基因となった事実を基礎として計算」した課税価格及び相続税額が申告又は従前の更正処分における金額と異なることとなったときには、当該相続人に対して更正処分をする旨を定めており、その規定振りからすれば、同項に基づく更正処分における課税価格の算定の基礎となる個々の財産の価額もまた上記と同様に、まずは申告における価額とし、その後に更正処分があった場合で、申告における価額のうち当該更正処分によって変更された価額があるときには、その価額を基礎にすべきであり、そうすると、本件のような申告後に更正処分の取消訴訟において遺産の評価が改められたという事情は、本来、申告時に内在していた事情であって、相続税固有の後発的事情とはいえず、相続税法32条各号にこれに当たるような事由は規定されておらず、したがって、本件各株式の評価方法及び価額に係る前件判決の判断を理由に、同条1号に基づいて更正請求をすることはできないと解するのが相当である。 (4) 本件更正処分の根拠である相続税法35条3項も相続税特有の後発的事由(遺産分割)を理由に増額更正することを認めたものと解されるから、同項による増額更正処分が違法であると主張してその取消しを求める場合も、同法32条1号に基づく更正請求についてと同様、相続に固有の後発的事由を原因としない事情を違法の理由として主張することはできないと解される。 (5) 日本の相続税については、遺産取得課税方式を基本としつつ、併用方式(相続税の総額を法定相続人の数と法定相続分によって算出し、各人の取得財産額に応じて課税する方式)とされているが、相続税法32条1号による更正請求や同法35条3項に基づく更正処分の取消請求において、個々の財産評価の誤り等を主張できるかどうかは、相続税につき、いかなる事由に基づいて更正請求が認められるかに係る問題であるから、遺産取得課税方式が基本であることからただちに上記更正請求や取消請求において遺産分割による財産の取得状況の変化以外の事由を主張できると解するのは困難である。 (6) X(被控訴人・第一審原告)は、申告により確定するのは納付すべき税額等や課税標準等であって、遺産の評価は確定しない旨主張するが、遺産の評価が変われば納付すべき税額等も変わり得るのであって、Xの上記主張は、申告により納付すべき税額等も一旦確定していることを否定するに等しく、採用することはできず、さらに、Xは、財産の価格は相続開始時の価格によるべきとの考え方はXに遺産の本来の価額に比して過大な負担を課すことになり不公平であると主張するが、負担が生ずるとしてもこの点は、国税通則法及び相続税法において、更正をし得る期間や事由が定められていることによるものであり、やむを得ないというべきである。 (7) 行政処分を取り消す判決は、「その事件」について、当事者たる行政庁その他の関係行政庁を拘束するとされ(行政事件訴訟法33条1項)、同項による拘束力は、取消判決の実効性を確保するために付与されたもので、行政庁に、処分又は裁決を違法とした判決の判断内容を尊重し、「その事件」について判決の趣旨に従って行動し、これと矛盾する処分等がある場合には、適切な措置をとるべきことを義務付ける効力であるから、訴訟における訴訟物に係る裁判所の判断について生じる既判力と異なり、主文が導き出されるのに必要な事実認定及び法律判断(理由中の判断)について生じるものと解され(最高裁昭和63年(行ツ)第10号平成4年4月28日第三小法廷判決・民集46巻4号245頁参照)、このような拘束力の具体的内容に鑑みれば、同項にいう「その事件」とは、取消判決に係る行政処分の対象である法律関係と解するのが相当である。 (8) 前件判決(に係る前件更正処分)と本件更正処分等は、いずれも本件被相続人の遺産に係るX(被控訴人・第一審原告)が納付すべき相続税の課税という同一の法律関係に係るものであるから、本件更正処分等は、前件判決との関係で行政事件訴訟法33条1項にいう「その事件」に該当すると認めるのが相当である。 (9) 取消判決の拘束力は、主文を導くのに必要な事実認定及び法律判断(理由中の判断)について生じるものであるところ、取消訴訟の訴訟物は、行政処分の違法一般であると解されているから、当該取消訴訟の対象である処分について、その根拠法規が定める各適法要件についての該当性、すなわち当該処分が各適法要件を充足しているということは、訴訟物に含まれ、各適法要件該当性に係る判断を導くのに必要な理由中の事実認定及び法律判断について拘束力が生じるというべきである。 (10)前件訴訟は、X(被控訴人・第一審原告)及び他の共同相続人の一部が、前件更正処分につき、前件訴訟事案であり、主な争点は、Aが株式保有特定会社に該当するかどうか並びにこれを前提とするA及びBの各株式の時価の評価方式及び価額であって、前件判決は、Aは株式保有特定会社に該当するものといえず、原則的評価方式である類似業種比準方式によって評価するのが相当であって、そうするとA株式は1株当たり4653円であり、B株式は、その資産であるA株式の評価が上記のとおりであることを基に所定の計算をすると、1株当たり3万1189円となるとし、これらの評価(その他の株式については前件更正処分における価額と同額)を用いて各相続人が納付すべき相続税額を計算し、それが本件申告において申告した納付すべき税額の範囲内であるから、前件更正処分は、本件申告に係る各納付すべき税額を超える部分が違法であると判断したものであり、すなわち、前件判決は、遺産である本件各株式の評価方法について判断し、それを用いて算出する価額(ただし、B株式については更正決定の対象となり得る明らかな違算がある。)に基づき、納付すべき税額を算出して、上記判断を導いたものであり、そうすると、前件判決において、前件更正処分が適法かどうかに係る主文の判断は、租税法規に従って客観的に算定した課税価格及び相続税額がいくらかによるが、これは適法要件に 該当するかどうかの問題であり、この適法要件に該当するかどうかについての結論を導くのに必要な事実認定及び法律判断は、まずは税額の計算の基礎となった遺産の価額についてされるものであるところ、価額は評価方法に沿って計算すれば正しい数値が算出されるものであり、逆に計算を誤れば正しい数値が算出されないことからすれば、評価方法ないし価額に係る判断に拘束力が生じると解するのが相当である。 (11)前件判決の判断のうち、争点となった個々の財産の評価方法ないし価額に係る判断並びにこれらを基礎として算定される課税価格及び相続税額に係る判断に拘束力が生じ、課税庁において、前件判決における評価方法ないし価額を基礎として課税価格を算定しなければならないものというべきであり、相続税法32条1号の「共同相続人又は包括受遺者が当該分割により取得した財産に係る課税価格」については、個々の財産の価額につき、申告における価額に、従前の更正処分による変更に加え、更に上記の判決による変更を加えた上での価額を基礎として、当該遺産分割後の課税価格を計算すべきであり、その結果、同号の「当該相続分又は包括遺贈の割合に従って計算された課税価格」及び同条柱書きの「更正に係る課税価格及び相続税額」に相当する上記の判決による一部取消し後の従前の更正処分に係る課税価格及び相続税額が過大となったときは、課税庁において、当該遺産分割後の課税価格及び相続税額に基づいて、同号の更正の請求に対する減額更正処分をすべきことになると解され、また、同法35条3項に基づく更正処分においても、同法32条1号の更正の請求に基づく減額更正処分の「基因となった事実を基礎として計算」する以上、同様に上記各変更後の個々の財産の価額を基礎として「その者に係る課税価格又は相続税額」を計算し、その結果として、「更正に係る課税価格又は相続 税額」、すなわち、上記の判決による一部取消し後の従前の更正処分に係る課税価格又は相続税額がこれと異なることとなる場合に、それに応じた更正処分が可能になるものと解される。 (12)Y(控訴人・第一審被告)は、本件更正処分が取り消された処分とは異なる独自の判断要素を含む場合は、行政事件訴訟法33条1項でいう「その事件」に当たらないと主張するが、本件更正処分等において前件判決の対象である前件更正処分と異なる独自の判断要素というのは、むしろ遺産分割があったこととみるべきであって、前件訴訟でも本件でも争われているA及びBの各株式の評価方法ないし価額について前件更正処分と異なる独自の判断要素があるわけではないから、Yの上記主張は本件更正処分等が前件訴訟との関係で「その事件」に該当することを否定し得るものではない。 (13)Y(控訴人・第一審被告)は、課税庁は前件判決における本件各株式の評価方法ないし価額に係る判断を基に本件各処分等をする職務上の権限も義務もない旨主張するが、課税の適正を期するため,課税庁は、申告書の提出があった場合、その申告書に記載された課税標準等又は税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったとき、その他当該課税標準等又は税額等がその調査したところと異なるときは、その調査により、当該申告書に係る課税標準等又は税額等を更正することができるのであって(国税通則法24条)、更正は増額更正のみならず、減額更正もすることができ、本件では、遺産の評価方法ないし価額は国税通則法23条の更正事由に該当するところ、前件判決が確定した時にはその更正決定の除斥期間(同法70条)が経過していたが、前件判決によって課税庁の課税標準等の算出における評価方法ないし価額に誤りがある旨判断され、いわば上記除斥期間内に課税庁の更正の権限が適正に行使されていなかったことが明らかといえるにもかかわらず、租税債権・債務の早期確定の観点から除斥期間等を理由に権限も義務もないとして上記前件判決の判断の拘束力に従った対応を拒むのは、先行する取消訴訟の実効性を確保して行政の適正を図ろうとする拘束力の趣旨に反する。 (14)Y(控訴人・第一審被告)は、前訴判決に係る評価方法ないし価額に係る判断に拘束力が生じると解することは、単独相続等と比較しても公平を失すると主張するが、そもそも単独相続は、申告前に申告をする者が取得する遺産が確定し、その権利変動が予定されない点で本件のように申告後に遺産分割がされた場合と状況を大きく異にし、また、本件のように遺産分割前に申告をした場合は、申告の際は全ての遺産について法定相続分に応じて取得したとみなされて税額が計算されるから、一部の遺産の評価に誤りがあるとしても、それにより共同相続人間に不公平は生じないのに対し、遺産分割後の更正の請求や更正処分にあっては、申告等の際誤って高額に評価された遺産を多く取得した相続人が正しく評価されていた場合に比べて過大な負担を負い、他の相続人はそれを免れるという不公平が生じ得るのであり、前件判決の拘束力を肯定することによってこれを是正する必要性は大きく、したがって、単独相続の場合や申告期限までに遺産分割を終えた場合と比較して公平を失するとのYの主張は採用することはできない。 |
<最高裁判決> 3 最高裁判所 令和2年(行ヒ)第103号 相続税更正処分等取消請求事件 令和3年6月24日判決(原判決変更・請求棄却) LEX/DB 25571598 【判決要旨】 本件更正処分がされた時点で国税通則法(平成23年法律第114号による改正前のもの)所定の更正の除斥期間が経過していた本件においては,処分行政庁は,本件更正処分をするに際し,前件判決に示された本件各株式の価額や評価方法を用いて税額等の計算をすべきものとはいえず,本件申告における本件各株式の価額を基礎として課税価格及び相続税額を計算することとなるから,本件更正処分は適法であり,X(被上告人・第一審原告)は,相続税の総額の計算においては本件申告における本件各株式の価額を用いるとしても,各相続人の取得割合の計算に当たっては前件判決に示された価額を用いるべきであるとも主張するが,相続税法上,各相続人の取得割合の計算は,相続税の総額の計算と同様に課税価格に基づいてするものとされていること等からすれば,上記の主張は理由がない。 45頁
【判示事項】(1) 相続税法32条1号及び35条3項1号の規定の趣旨。 (2) 相続税法32条1号の規定による更正の請求においては,一旦確定していた相続税額の算定基礎となった個々の財産の価額に係る評価の誤りを当該請求の理由とすることができるか(消極)。 (3) 処分を取り消す判決が確定した場合には,その拘束力(行政事件訴訟法33条1項)によって行政庁が法令上の根拠を欠く行動を義務付けられるものではないから,その義務の内容は,当該行政庁がそれを行う法令上の権限があるものに限られるとした事例。 (4) 課税庁は,国税通則法所定の更正の除斥期間が経過した後に相続税法32条1号の規定による更正の請求に対する処分及び同法35条3項1号の規定による更正をする場合、既に確定した判決で示された個々の財産の価額や評価方法を用いて税額等を計算すべき義務を負わないとした事例。 (5) 本件更正処分をするに際し,前件判決に示された本件各株式の価額や評価方法を用いて税額等の計算をすべきものとはいえないとした事例。 (6) 相続税法35条3項1号による増額更正は、同法32条1号に基づく更正の請求に対する更正すべき理由がない旨の通知処分の内容を包摂するとして通知処分の取消しを求める訴えは不適法とした事例。 【判決要旨】 (1) 相続税法32条1号及び35条3項1号は,同法55条に基づく申告の後に遺産分割が行われて各相続人の取得財産が変動したという相続税特有の後発的事由が生じた場合において,更正の請求及び更正について規定する国税通則法23条1項及び24条の特則として,同法所定の期間制限にかかわらず,遺産分割後の一定の期間内に限り,上記後発的事由により上記申告に係る相続税額等が過大となったとして更正の請求をすること及び当該請求に基づき更正がされた場合には他の相続人の相続税額等に生じた上記後発的事由による変動の限度で更正をすることができることとしたものであり、その趣旨は,相続税法55条に基づく申告等により法定相続分等に従って計算され一旦確定していた相続税額について,実際に行われた遺産分割の結果に従って再調整するための特別の手続を設け,もって相続人間の税負担の公平を図ることにあると解される。 (2) 相続税法32条1号の規定による更正の請求においては,後発的事由以外の事由を主張することはできないのであるから,一旦確定していた相続税額の算定基礎となった個々の財産の価額に係る評価の誤りを当該請求の理由とすることはできず,課税庁も,国税通則法所定の更正の除斥期間が経過した後は,当該請求に対する処分において上記の評価の誤りを是正することはできないものと解するのが相当であり、また,課税庁は,相続税法35条3項1号の規定による更正においても,同様に,上記の評価の誤りを是正することはできず,上記の一旦確定していた相続税額の算定基礎となった価額を用いることになるものと解するのが相当である。 (3) 処分を取り消す判決が確定した場合には,その拘束力(行政事件訴訟法33条1項)により,処分をした行政庁等は,その事件につき当該判決における主文が導き出されるのに必要な事実認定及び法律判断に従って行動すべき義務を負うこととなるが,上記拘束力によっても,行政庁が法令上の根拠を欠く行動を義務付けられるものではないから,その義務の内容は,当該行政庁がそれを行う法令上の権限があるものに限られるものと解される。 (4) 相続税法55条に基づく申告の後にされた増額更正処分の取消訴訟において,個々の財産につき上記申告とは異なる価額を認定した上で,その結果算出される税額が上記申告に係る税額を下回るとの理由により当該処分のうち上記申告に係る税額を超える部分を取り消す旨の判決が確定した場合には,当該判決により増額更正処分の一部取消しがされた後の税額が上記申告における個々の財産の価額を基礎として算定されたものである以上,課税庁は,国税通則法所定の更正の除斥期間が経過した後においては,当該判決に示された価額や評価方法を用いて相続税法32条1号の規定による更正の請求に対する処分及び同法35条3項1号の規定による更正をする法令上の権限を有していないものといわざるを得ず、そうすると,上記の場合においては,当該判決の個々の財産の価額や評価方法に関する判断部分について拘束力が生ずるか否かを論ずるまでもなく,課税庁は,国税通則法所定の更正の除斥期間が経過した後に相続税法32条1号の規定による更正の請求に対する処分及び同法35条3項1号の規定による更正をするに際し、当該判決の拘束力によって当該判決に示された個々の財産の価額や評価方法を用いて税額等を計算すべき義務を負うことはないものというべきである。 (5) 本件更正処分がされた時点で国税通則法(平成23年法律第114号による改正前のもの)所定の更正の除斥期間が経過していた本件においては,江東東税務署長は,本件更正処分をするに際し,前件判決に示された本件各株式の価額や評価方法を用いて税額等の計算をすべきものとはいえず,本件申告における本件各株式の価額を基礎として課税価格及び相続税額を計算することとなるから,本件更正処分は適法であり、X(被上告人・第一審原告)は,相続税の総額の計算においては本件申告における本件各株式の価額を用いるとしても,各相続人の取得割合の計算に当たっては前件判決に示された価額を用いるべきであるとも主張するが,相続税法上,各相続人の取得割合の計算は,相続税の総額の計算と同様に課税価格に基づいてするものとされていること等からすれば,上記の主張は理由がない。 (6) 相続税法55条に基づく申告の後に遺産分割が行われた場合における特定の相続人による同法32条1号の規定による更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の通知処分と当該相続人に対する同法35条3項1号の規定による増額更正は,いずれも当該遺産分割による各相続人の取得財産の変動という相続税特有の後発的事由を基礎としてされた同一相続人に対する処分であり,上記増額更正は,一旦確定していた税額を当該遺産分割が行われたことを理由に増額させて確定する処分であるから,当該遺産分割に伴い税額を減額すべき理由はないという上記通知処分の内容を実質的に包摂するものということができ、加えて,上記更正の請求がされているため,当該相続人は,上記増額更正の取消訴訟において,上記更正の請求に係る税額を超える部分の取消しを求めることが可能であると解され、 |